【ジャッジ検証】イングランド×ドイツ、2度のVAR介入→PKジャッジ変更を元主審・家本氏が称賛「正しい方向に持っていった」
【専門家の目|家本政明】UEFAネーションズリーグの注目カードで起こった2度のPKシーンに言及
欧州で行われているUEFAネーションズリーグ(NL)では、ヨーロッパの強豪が鎬を削る戦いを展開している。9月26日(現地時間)に行われたリーグA/グループ3の第6節イングランド代表(同5位)対ドイツ代表(FIFAランキング11位)の注目対決は、3-3のドロー決着となったなか、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が介入しペナルティーキック(PK)判定となった2つのシーンがあった。元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏に、試合を左右したこの2つの事象について尋ねた。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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まず1つ目は、ドイツの先制点につながった場面だ。0-0で迎えた後半4分過ぎ、イングランド代表DFハリー・マグワイアの縦パスをドイツ代表FWジャマル・ムシアラがカットしそのままペナルティーエリア内へ。ムシアラはインコースにカットインすると、マッチアップしたマグワイアの右足が掛かり転倒。主審はファウルを取らず、そのままプレー続行となった。
しかし、プレーが途切れたところでVARが介入し、主審はオンフィールドレビューを実施。その後判定が変わり、マグワイアのファウルを取りドイツにPKを与えている。
家本氏はこのシーンについて「不用意なタックルだったので、PK判定は正しかったと思います」と述べたうえで、「そんなに難しい事象ではなかったはずなので、なぜ最初にノーファウルとしたのかは疑問です」とし、こう続けた。
「接触の時、レフェリーは続けろというジェスチャーをしています。足を蹴った事実はあったけれども、ノーマルフットボールコンタクトと判断したのかなというところでしょうか。ただ、相手の足があって、明らかにマグワイア選手がその足を蹴っている。普通にPKだと思いました」
続けて、「VARが助言したのは妥当な判断で、その後主審がPKとジャッジを変えたのは良かったと思う」と、一連の流れを称賛した。
家本政明
いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。