“大国”ドイツになぜ異変? FWミュラーが自虐コメント…日本と対戦のW杯本大会へ不安増幅のワケ
代表での活動期間はW杯直前まで“なし”、理想的とは言えない状況に
だが、ワールドカップ(W杯)までは時間がない。W杯は集大成とよくいわれるが、むしろ短期決戦だ。チームとしての戦術的ベースがあって、各選手にクオリティーがあったうえで、大会中のフィジカル&メンタルコンディションを上げ、流れを掴めるかかが何より重要になる。
そんななか、多くの選手が所属クラブで本調子とは程遠い出来なのが気掛かり。バイエルンは直近のリーグ4試合連続未勝利、ライプツィヒも監督交代による好影響はまだ感じられない。代表戦でもどこか自信なさげに見えてしまう。
MFヨシュア・キミッヒ(バイエルン)は首をひねりながらも、次のように話していた。
「僕らは自分で自信を持ってピッチに立てるだけのクオリティーを持っている。クラブで勝てなかったり、思うようなプレーができてなかったりということがあると、切り替えるのは難しいけど、それができるだけのクオリティーを持つ選手が揃っていると思うんだ。僕はそのつもりでピッチに立っているし、直前数試合でうまくいかなかったところから気持ちを切り替えてプレーできるという自負はある」
この日途中出場だったFWトーマス・ミュラー(バイエルン)が「後半20分にテレビを消していた人はW杯へ向けてとても気持ちよく眠ることができただろう」と少し自虐的に話していたのが悲しく響く。
代表での活動期間はW杯直前まで設けられていない。理想的とは言えない状況でここからの6週間を迎えることになるわけだが、それでもフリック監督は力強く語る。
「大事なのはこの6週間、選手が自身と向き合い続けることだ。プレーの確実さ、自身のフィットネス、確信を持ったポゼッションプレー。そこに取り組み続けてほしい。我々はチームとしていい試合をすることができる。自分たちができるベストに尽くしていく。いよいよW杯が始まるとなった時に、全選手が熱く燃えていて、本当にいいW杯にすることができると信じている」
指揮官の言葉は選手に届くだろうか。ここからの6週間で各選手の調子は上向いてくるだろうか。少なからずの不安材料を抱えながら、W杯最後の公式戦を終えたドイツ。果たして11月23日の日本代表戦までにどこまで調整できるかに注目だ。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。