日本代表が示した“弱点”克服策…“崩す”ではなく、崩れている状態で攻める方式へ 「プレッシング」という立派な回答

アメリカ戦で見せたW杯への力強い一歩、前田起用で前からのプレッシング威力を担保

 欧州遠征の初戦、日本代表はアメリカ代表に2-0と快勝した。

 敵陣でのプレッシング、ミドルゾーンでの守備、自陣でのビルドアップのいずれも上手く機能していた。米国のコンディションがあまり良くなかった点は差し引いて考えなければならないが、1つの回答を示せた試合だったと思う。

 日本の弱点は守備を固めている相手を崩して得点できないことだった。アジア予選では伊東純也と三笘薫のドリブル突破以外にこれといった攻め手を見出せておらず、「戦術・三笘」と揶揄されてもいた。アメリカ戦でも三笘の個人技からの2点目はあったのだが、鎌田大地の先制点を含むチャンスの多くは相手のビルドアップのミスを突いての攻め込みだった。

 つまり、日本代表も相手の守備を崩すのではなく、崩れている状態で攻めれば良いという方式にしたわけだ。以前から狙っていたことではあるが、より徹底されていた。前田大然をセンターフォワード(CF)で先発起用したのも、前からのプレッシングの威力を担保するためだろう。

 これはこれで1つの立派な答えだと思う。ただ、結局のところ全部あるのがサッカーである。相手がビルドアップを放棄したらハイプレスでは奪えないわけで、どこかで崩して点を取る力は問われることにはなる。とはいえ、ワールドカップ(W杯)へ向けて力強い一歩を踏み出せた試合にはなった。

page1 page2 page3

西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング