三笘薫の“スルスル”幻惑ドリブル弾…「なぜ触れない?なぜ飛び込めない?」 金田喜稔が「相手がひっかかる」理由を解説
【専門家の目|金田喜稔】アメリカ戦で生まれた三笘のスーパーゴールを分析
森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング24位)は9月23日、ドイツ・デュッセルドルフでのキリンチャレンジカップでアメリカ(同14位)と対戦し、2-0と勝利を収めた。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏は、スーパーゴールを叩き込んだMF三笘薫(ブライトン)の幻惑ドリブルを分析。「なぜ相手はボールに触れないのか? なぜ相手は飛び込めないのか?」という疑問について解説している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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前半25分にショートカウンターからMF鎌田大地(フランクフルト)が先制ゴールを奪い、終了間際の後半43分に三笘がドリブル弾を叩き込んだなか、金田氏は「やっぱり三笘は独自のスタイルを持っている」と注目している。
左タッチライン際でパスを受けた三笘は、ゴール方向へ身体を向けるとドリブルを開始。1人目の相手と対峙したなか、相手は間合いを詰められずにずるずると下がり、三笘が小さなフェイントを入れると思わず反応する。その隙を見逃さずに一気にスピードアップした三笘は、後方から寄せた2人目を置き去りにし、最後に立ち塞がった相手もキックフェイントを織り交ぜて飛び込ませず、スルスルとすり抜けるようなドリブルからシュートを叩き込んだ。
金田氏は「あのゴールシーンで相手を見事に翻弄していた。では、なぜ相手はボールに触れないのか? なぜ相手は飛び込めないのか? 答えは、ボールを持っている時のフォームがいつも同じだからだ」と解説する。
「同じフォームから縦へのドリブル突破、得意の右足アウトサイドのパス、カットインドリブルを巧みに使い分ける。そして同じフォームでボールを持つから、三笘が上半身を少し右や左へ向けるフェイントを織り交ぜるだけで、相手は簡単にひっかかってしまう。どんな小さな動きもフェイクに見えないのがポイントだ。そうなると、三笘の一挙手一投足に相手は反応し、そのたびに右や左へ体重移動を強いられる。この時、相手はうかつに飛び込めず、足を出すタイミングがなくなり、ボールに触れないまま後手を踏むことになる」
また、三笘が特別である理由について「単なるドリブラーの枠に収まらない」点を挙げる金田氏は、次のように続ける。
「それはこの日のゴールが証明している。シュートセンスとシュート精度も兼ね備えているから厄介で、相手はまずシュートを警戒するから、キックフェイントも生きてくる。ゴールシーンでは相手が完全に後手を踏み、文字どおり手も足も出ずにゴールを叩き込まれていた」
2021年11月の代表デビュー以降、8試合で5ゴールの決定力を見せつける三笘。進化を続ける規格外アタッカーのサクセスストーリーは、まだ始まったばかり。27日の次戦エクアドル戦のパフォーマンスにも期待が懸かる。
金田喜稔
かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。