日本代表、森保監督がアメリカ戦でトライした“6つのテスト” 根本的な解決に至ってないポイントは?
前線からのプレスをかいくぐられた場合、ロングフィードを連発された場合は次回へ
■4:「相手の嫌がる守備からの攻撃」
森保監督が常々口にする「相手の嫌がる守備からの攻撃」は、この試合に限っては上手くいった。FWとトップ下、両サイドのFWが相手のパスコースを限定し、ボランチがボールを奪ってはショートカウンターを仕掛ける。アメリカは日本の仕掛ける網をくぐり抜けることができなかった。
だが問題は、1トップが攻撃の核として機能しなかったという点だ。献身的な動きを見せたものの、味方選手のコースを作るばかりになってシュートの場面に顔を出せない。果たして、この点は起用する選手を変えれば解決できるのか、あるいはチーム全体でゴールを奪うということにして割り切るのか、決断が必要になるだろう。
また、もう1つの懸念はボールを奪ったあとの動きにある。ダイレクトでボールをつなぐことで相手のプレスをかわしていたが、1試合続けるとなると活動量が必要となる。アメリカ戦が行われたデュッセルドルフの気温は21.5度だったが、11月のドーハの最高気温は26度から29度。どこかで上手くペースを落とさなければ1試合持つことはない。
■5:センターバックの組み合わせ
CBは前半は吉田麻也と冨安、後半は吉田と伊藤洋輝という組み合わせを試した。だが、吉田がいない組み合わせを試していない。今シーズンのここまでの吉田の出来を考えると、冨安と伊藤という組み合わせこそ試すべきだったのではないだろうか。
■6:GKまで含めた相手プレスのかわし方
アメリカのプレスが弱かったこともあるが、日本守備陣に圧力をかけられた時、パスをつないでかわし続けた。これはすべて練習どおりで、進歩も見られる。あとはさらに相手の強度が高くなった時を想定しておけるかどうかだろう。
■7:この試合ではできなかったこと
アメリカ戦で日本がテストできなかったことは2つある。1つは前線からのプレスをかいくぐられて中盤を突破されること。W杯ではアメリカ戦のようにパスカットできることは多くないだろう。プレスをかわされて戻りながら守備をするという場面が出てくるだろうが、そのテストは行えなかった。
また、最終ラインに向かって何度もロングフィードを出される、日本が不得手とする攻撃パターンにも晒されなかった。本番なら当然相手は狙ってくるはず。森保監督は当然対応策を練っていると思うが、練習試合で試したかったのではないだろうか。
以上、大まかにアメリカ戦を振り返ってみた。9月27日のエクアドル戦ではまた別のテストが行われ、新たな課題が出てくるはずだ。今回の2試合で出たすべての問題点が11月の事前合宿で解決できる量であることを祈るばかりだ。
森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。