日本代表、森保監督がアメリカ戦でトライした“6つのテスト” 根本的な解決に至ってないポイントは?
左サイドの連係は根本的な問題解消には至らず
■2:右サイドのコンビネーション
前半は伊東純也が内側、酒井宏樹が外側のレーンを使うパターンを試し、後半、堂安律に交代するまでは伊東が外に開いて、後半は右サイドバック(SB)を務めた冨安健洋がインナーラップするパターンを試した。
これまでの日本代表のパターンを分析すれば、当然相手は伊東を厳しくマークすることが予想され、それにどう対応するかという試みだったはず。今までは伊東が前で張って酒井がうしろを抑えるか、あるいはインナーラップしているパターンが多かったので、伊東と酒井とのコンビにバリエーションが加わった。
そして回数は多くなかったものの、冨安がインナーラップして変化を付ける攻撃は、冨安のプレーの幅の広さから相手にとって大きな脅威になることを想像させた。ただし、W杯でもう2試合が残っているのみ。右SBとして冨安、伊東とのコンビを試すには時間はない。効果的なのは分かったが、使われるとしたらスクランブルの時、ということになるのではないだろうか。
■3:左サイドのコンビネーション
一度も試したことがなかった久保の左FW(サイドハーフ)起用は、現在も左サイドの最適解が見つかっていないことを示唆した。
これまでは南野が内側に入ってプレーするため、長友佑都を左SBとして使い、オーバーラップや南野が空けた穴をカバーさせていた。だが、久保は南野に比べてより外側からプレーすることが多く、そのため左SBは守備力の高い中山雄太が使われた。そして久保が中央に進出した場合は、鎌田がポジションチェンジして補っている。もっとも鎌田が開くパターンで崩せたものの、左サイドのみのコンビネーションではなかなか崩せなかった。
三笘が投入されてからは、守備の負担を減らして三笘の個人技を生かすいつもの陣形にシフトし、実際にそれで結果を出した。だが、三笘がより効果的なのは相手が疲れてきた後半に投入された時。そう考えると、これまで最多の人数がテストされた左サイドはまだ根本的な問題解決には至っていない。
ちなみに、ワールドカップアジア最終予選から6月の親善試合4試合までで試された選手は以下のとおりになる。
南野拓実:9回
三笘 薫:7回
原口元気:3回
浅野拓磨:3回
古橋亨梧:3回
前田大然:1回
中山雄太:1回
森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。