冨安健洋は「レベルが違う」 10か月ぶりのハイパフォーマンスを日本代表OBが称賛「守備陣の軸」
【専門家の目|栗原勇蔵】スピード、強さを兼ね備えた冨安は最終ラインに不可欠
森保一監督率いる日本代表は9月23日、ドイツ・デュッセルドルフでの国際親善試合でアメリカ代表(FIFAランキング14位)と対戦し、2-0で勝利した。DF冨安健洋(アーセナル)は昨年11月以来となる出場で、前半はセンターバック(CB)、後半は右サイドバック(SB)をこなして存在感を示した。元日本代表DF栗原勇蔵氏は、「やはり守備陣の軸は冨安」と称賛している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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森保監督は9月シリーズ初戦となるアメリカ戦で、カタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の途中からメインシステムとしていた4-3-3ではなく、4-2-3-1を採用。最終ラインには日本代表での実戦から遠ざかっていたDF酒井宏樹(浦和レッズ)と冨安、DF吉田麻也(シャルケ)、DF中山雄太(ハダースフィールド・タウン)の4人が入った。
序盤からスピードのあるFW前田大然(セルティック)を中心とした連動したプレスで優勢に試合を進めた日本は、前半25分にカウンターからトップ下に入ったMF鎌田大地(フランクフルト)が先制ゴール。試合終盤には途中出場したMF三笘薫(ブライトン)がサイドを崩して個人技でダメ押しゴールを奪い、2-0でアメリカを下した。
昨年11月のW杯アジア最終予選以来となる日本代表での試合となった冨安は、前半6分にスルーパスに抜け出した相手FWブレンデン・アーロンソンとのデュエルで上手く身体を入れ、ターンしてボールをキープ。同29分には右サイドからのスローインからペナルティーエリア内の侵入を許したが、すかさずカバーに入ってクリアした。後半開始からは右SBに回り、無失点で切り抜けている。
元日本代表DF栗原氏は、「冨安はやはりスピードがあるし、強さもあるし、頭一つ抜けていてレベルが違う」と手放しで絶賛した。
「守備陣の軸は冨安だと再認識しました。その選手がアーセナルではスタメンで出られないわけなので、海外は恐ろしいなと改めて思います。右SBとしての起用は、(左膝靭帯部分断裂で招集が見送られた)板倉(滉)がいれば、という前提になってくるかもしれません。アメリカクラスの相手なら吉田と(後半開始から出場した)伊藤洋輝のコンビでも行けるかもしれませんが、それ以上だと冨安が真ん中(CB)にいてくれないと厳しい。右SBでの時間帯は、冨安が上がった裏を使われる形も何回かあったので少し怖さがあります」
板倉の状況が不透明なだけに、今年に入って怪我に苦しんできた冨安が本来のパフォーマンスを見せたことは光明と言えそうだ。
栗原勇蔵
くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。