日本代表OB呂比須ワグナーが森保ジャパンを分析 カタールW杯で「ダークホース」になると断言する理由は?
「素晴らしいW杯にしてくれることを祈っている」とエール
しかし、呂比須は森保一監督の方針を尊重していることも強調する。
「僕はあくまで、テレビ中継という限られた状況で見ているだけだから、全体のポジショニングを見ることができない。それに、各選手の実際の特徴はどうなのか、あのブラジル戦に出ていた選手以外にどういう選択肢があるのかなど、すべてを分析できているわけじゃないんだからね」
また同時に、森保ジャパンに関していくつかのポジティブな面も挙げる。
「日本はセットプレーでの空中戦に非常に強い。コーナーキック(CK)でブラジルにあれほどアドバンテージを持った代表チームは少ないはずだ。だから、それをもっと良く掘り下げていくべきだと思うよ。日本のCKにはいくつかのバリエーションがあって、ショートコーナーがあったし、3人で数的有利を作る場面もあった。ただ、吉田(麻也)は189センチ、板倉(滉)は186センチで、あの2人のいいヘディングがあるから、それをもっと生かしてもいい。クロスからゴールを決めるためにね。
ゴールを決めるためにプレーするんだという目的意識が、もう少し必要なんだ。そのためにも、セットプレーをもっと生かせるといいし、そのコンディションはあると思う。今の日本には、技術力だけでなく、背丈もパワーもある。技術力で言えば、三笘(薫)が入ったのは、すごくいいことだね。非常に簡単そうにドリブルをし、フェイントで抜くことができる。スピードもある」
多くの代表選手が欧州でプレーしているのも、呂比須が日本に期待する要因だ。
「以前の日本は才能を輸入していた。ブラジルはもちろん、ヨーロッパや南米など、世界中からね。それが今では、多くの才能を輸出しているんだ。ベルギーやオランダ、ドイツ、それにイングランドのプレミアリーグでも、その国の上位を争う強いチームに、技術力の高い日本人選手たちがいて、怖がらずに、非常に高いレベルでプレーしているんだ。そして、世界中で認められ、尊重されている。僕が夢見ていたことが、現実に起こっているんだ。
それに、彼らはメンタル面でも、メリットを日本代表にもたらせるはずだ。日本に必要なのは、失点したり、逆に連続得点ができたり、ブーイングされたり、プレッシャーがかかったりする時に、感情面をコントロールすることだと思う。ドイツやスペインも、心理面でもすごく仕事をしているよ。メンタルが非常に強い。スポーツ心理学を取り入れるのは大事なことだと思う」
W杯展望の締めくくりとして、呂比須は自分自身がプレーし、今も愛してやまない日本代表に、メッセージを送ってくれた。
「選手、監督、技術委員会スタッフ、そしてサッカー協会で指揮を執るすべてのメンバーを応援している。準備は簡単じゃないし、やることがたくさんある。でも、1人1人がベストを尽くし、自分の持ち得るものを代表に注いで欲しい。そして、僕らサポーターにできることはただ1つ。いいエネルギーを伝えることだ。日本がグループリーグを突破するために。そして、決勝トーナメントで素晴らしい試合をし、これまで以上に勝ち進むために。素晴らしいW杯にしてくれることを祈っている。ボア・ソルチ(幸運を祈る)!」
[プロフィール]
呂比須ワグナー/1969年1月29日生まれ、ブラジル出身。サンパウロ―日産自動車―日立/柏―本田技研-平塚―名古屋―FC東京―福岡。J1通算125試合69得点、J2通算19試合6得点。1997年に帰化し、翌98年のフランス・ワールドカップに出場した日本代表メンバーに名を連ねたストライカー。指導者に転身後は、ブラジルのクラブを中心にJ2アルビレックス新潟の監督も歴任した。
藤原清美
ふじわら・きよみ/2001年にリオデジャネイロへ拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特に、サッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のテレビ・執筆などで活躍している。ワールドカップ6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTubeチャンネル『Planeta Kiyomi』も運営中。