日本代表OB呂比須ワグナーが森保ジャパンを分析 カタールW杯で「ダークホース」になると断言する理由は?
【専門家の目|呂比須ワグナー】高齢化が進む初戦の相手ドイツにはチャンスあり
現役時代はベルマーレ平塚(元湘南ベルマーレ)や名古屋グランパスなど、日本で15年間プレーした呂比須ワグナーは、1997年に帰化してからは日本代表として、ワールドカップ(W杯)アジア予選と1998年のフランスW杯、招待国として参加した1999年コパ・アメリカ(南米選手権)を戦った。現在は監督としてブラジルのクラブを歴任しながら、今も日本サッカーに注目している。そんな呂比須ワグナーに、来たるカタールW杯の日本代表の行方を展望してもらった。(取材・構成=藤原清美)
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「僕は日本がダークホースになり、グループリーグを突破すると思うよ」
呂比須の第一声はこれだった。もちろん、日本が戦うE組には、ドイツ、スペインという強豪国が揃うことは承知の上だ。そこで、まずは対戦国の現状について分析してもらった。
森保ジャパンが初戦でぶつかるのは、W杯優勝4回を誇るハンジ・フリック監督率いるドイツだ。
「ドイツはパワーがあって、技術的なクオリティーが高い。試合のシステムもオーガナイズされている。強みはボールポゼッション。そして、ボールを失った時、その直後6秒間のパワーとスピードを生かしたプレッシャーが非常にインテンシブだ。ただ、今は選手の年齢層が非常に高くなっていて、33歳以上の選手が多いから、そのインテンシブさが減少しているんだ。だから、試合中の消耗の度合いによっては、後半30分を過ぎる頃に困難を抱え始める。彼らにすれば、それより前に試合を決めてしまえるかに勝負が懸かっている。
それに、気候も影響する。W杯の時期は摂氏24〜26度とのことだけど、試合日がどうかは分からないよね。だから、ドイツはフィジカル的にいい準備ができているか、それ次第でもあると思う。もちろん、そうは言っても尊重に値する選手たちが揃っているけどね」
では、E組で最もFIFAランキングが高く(6位)、2010年の南アフリカW杯を制したスペインはどうか。
「もっと戦術面に長け、もっと技術力が高い。パスを回して、トライアングルでボールを支配し、試合をスピーディーに展開させる。相手のディフェンスラインの間に入ってパスコースを作ったり、縦への動きで攻撃する。サイドチェンジしたり、ペナルティーエリアに攻め込んだり、ディフェンスラインの裏を取るために斜めに攻撃したり、センターバック(CB)の背後にスルーパスを出したりね。そういう練習が非常によく積まれている。それに、スペインには新しい選手たちが入ってきて、すでに世代交代の過程に入っている」
藤原清美
ふじわら・きよみ/2001年にリオデジャネイロへ拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特に、サッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のテレビ・執筆などで活躍している。ワールドカップ6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTubeチャンネル『Planeta Kiyomi』も運営中。