ソシエダ久保建英の序盤戦総括…「身を粉にして助ける」新境地 地元紙チーム2位の高評価、現地記者が感じた大きな変化とは?
監督との出会いが分岐点に 「監督が僕の知らない才能や動きを要求してくれた」
今季の久保のパフォーマンスの良さは、ソシエダの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」の採点でも窺える。同紙は毎試合、各選手のパフォーマンスを6段階評価(0点~5点)しており、久保の公式戦8試合の合計は28点、1試合平均3.5点となっている。唯一低かったのはハーフタイムで退いたヘタフェ戦の1点だった。
28点というのはトップのブライス・メンデス(31点)に次ぐチーム2番目に素晴らしい数字。守護神アレックス・レミーロ(27点)や中盤の要ミケル・メリーノ(27点)を上回っていることは、久保のここまでの働きぶりを十分表している。
また今季のプレーに言及すると、チームの公式戦総得点の30%に直接絡む攻撃の貢献度の高さはもちろんだが、守備面の働きにも注目したい。うしろに引いてボールを追い回すことが多かったマジョルカ時代の昨季と違い、今季は前線からの積極的なプレスが目立っている。特に直近のリーガ第6節エスパニョール戦で見せた、身体を張った相手GKへの猛烈なプレスでボールを奪い、アレクサンダー・セルロートの先制点をアシストしたシーンは、久保の献身性の高さを示すものとなった。
久保はエスパニョール戦後、ボールがないところでの仕事ぶりを高く評価されたことに対し、「これまでいつも“久保は守備に苦しみ、チームの助けにならない”と言われていた。それは体格による先入観があったのかもしれないけどね。でも今季はその逆で、身を粉にしてチームを助けていることを証明できていると思う」と、守備面が大きく改善されていることに自信をうかがわせた。
また今季の久保を語るうえで外せないのは、複数のポジションをこなす”ポリバレントな能力”だろう。過去に所属したチームでは主に右サイドで起用され、時折プレーした左サイドではやり辛さが感じ取れた。一方、今季はアルグアシル監督に新たに見出された能力や動きで、FWやトップ下、サイドアタッカーと、攻撃のさまざまなポジションに上手く対応している。
このことについて久保は、「週に2試合以上あるので、いつも同じメンバーでプレーすることはできない。そのため選手を入れ替えているし、僕は監督に言われたことに適応している。ここに来る前、監督に“どこでも適応できるけど左サイドは好きではない”と伝えたけど、僕は今、そのサイドでのプレーにとても満足しているよ。センターフォワード以外ならどこでも適応することができる」と、かつて苦手だったポジションを克服したことを強調していた。
久保にとってアルグアシル監督との出会いが大きく成長する分岐点となったことは確かだろう。それは以前、カディス戦でゴールを決めたあとに「監督が僕の知らない才能や動きを要求してくれた」と新たな能力が引き出されたことに感謝したことからも分かる。
高橋智行
たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。