24歳元Jリーガーはなぜ消防士へ? “人命救助のスペシャリスト”への挑戦…異色の転身の舞台裏
第2の人生の目標は大きな災害で活躍する「特別高度救助部隊」
神奈川県の横浜市消防訓練センターには、「信頼」「規律」「努力」の3つの言葉が教室に掲げられており、石垣はその教えを胸に、日々の訓練に励んでいる。
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「高卒でサッカーの厳しい世界に入って、もし大学に行っていたらまた何かしら道は違っていたかもしれません。でも、大学に行っていたら経験できないことを経験させてもらって、おこしやす京都AC、アルテリーヴォ和歌山では、社会人としてスポンサーの営業回りの仕事をしながらサッカーをしていました。消防士の世界でも必要になる社会人としてのマナーを学べたのは、今につながっています」
消防学校を修了後、横浜市18区の消防署いずれかに配属され、10月1日から現場勤務となる石垣。消防士としての目標は、大きな災害で活躍する「特別高度救助部隊(スーパーレンジャー/通称SR)」になることだ。
現場で活躍する部隊は大きく分けて3つ。火災現場にいち早く駆けつけて火を消す「消防隊」、火災や事故に遭った人を助け出す「救助隊」、救急車に乗って怪我人や体調不良者の応急処置をして病院へ搬送する「救急隊」がある。なかでも、人命救助に関する専門的な教育を受けた隊員5人以上で編成され、各消防署に一隊のみが配置される「特別救助隊」があり、さらにその上に位置するのが「SR」と名付けられた精鋭部隊だ。
「特別高度救助部隊(通称:SR)になるには、まず専科教育『救助隊員養成科』を経て、各消防署に配置されている特別救助隊(通称:YR)になる必要があります。階級を上げ、多くの経験を積み、豊富な知識や技術を習得したうえで、特別救助隊(通称:YR)約300人の中から選抜される特別高度救助部隊になりたいと思います。道のりはまだまだ長いですけど、今一番の目標に向かって頑張りたいと思います」
火災や事故はいつ起こるか分からず、消防士はいつでも出場できるように24時間体制で待機。片時も気は抜けず、命と隣り合わせでもある。それでも、石垣は「人を助ける仕事」にやりがいを感じていると話す。
「危険と隣り合わせの仕事なので、おそらく両親は心配してくれていますが、僕の夢を応援してくれています。やりがいを感じていなかったら、この仕事はできません。横浜市消防局では、現場の安全管理を重視していて、『必ず生きて帰ってこい』と言われています。現場に出て、自分が何をできるか。無我夢中で頑張りたいと思います」
消防士に華麗なる転身を遂げた元Jリーガーが、新たな使命に向かってついに動き出す。
(文中敬称略)
[プロフィール]
石垣徳之(いしがき・のりゆき)/1997年11月30日生まれ、神奈川県出身。暁星国際高―相模原―おこしやす京都―アルテリーヴォ和歌山。J3通算0試合0得点。元フランス代表DFバンジャマン・メンディに憧れを持つ左利きの左SB。今年4月からサッカー選手と並ぶ夢だった消防士の世界に飛び込み、特別高度救助隊(SR)を目指して新たなチャレンジに挑む。