24歳元Jリーガーはなぜ消防士へ? “人命救助のスペシャリスト”への挑戦…異色の転身の舞台裏

元Jリーガーの石垣徳之は今年10月から消防士として現場に出る【写真提供:横浜市消防局訓練センター教育課】
元Jリーガーの石垣徳之は今年10月から消防士として現場に出る【写真提供:横浜市消防局訓練センター教育課】

【元プロサッカー選手の転身録】石垣徳之(相模原):Jリーグで壁を味わい、22歳で現役を引退

 近年、アスリートのセカンドキャリアは大きな注目を集めている。サッカー界であれば監督やコーチ、チームスタッフを第2の人生とする例が多い一方で、営業マンや起業家など、別業界への転身も少なくない。そのなかで、消火や救急・救助など災害や火災現場で人命を守る「消防士」の世界に飛び込んだ男がいる。石垣徳之――。サッカー選手と並ぶ“もう1つの夢”を追い求めた24歳は、新天地で人々を助けるべく、すべてを懸ける覚悟だ。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小田智史)

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 石垣のサッカー人生は、厳しい現実との戦いだった。暁星国際高時代こそ1年時からレギュラーを張ったが、2016年に大きな期待を抱いて飛び込んだプロの世界では大きな壁に直面。J3のSC相模原に所属した2年間は、公式戦に一度も出場することはできなかった。

 18年、関西サッカーリーグ1部に所属する社会人クラブのおこしやす京都ACに移籍するも、リーグ戦で8試合の出場にとどまり1年で退団。翌年は同じく社会人クラブのアルテリーヴォ和歌山に新天地を求めたが、シーズン途中に右肘脱臼の怪我を負い、ラスト3か月はピッチに立つことも叶わなかった。

「サッカー選手として、まずは4年間を目標にやってみようとスタートを切りました。高校時代は1年生の時からスタメンで、運動量、絶え間ない上下動、左足のキックが売りの左サイドバック(SB)でしたけど、Jリーグはすべてが違っていて、その差に心を折られました(苦笑)。おこしやす京都ACを経て、アルテリーヴォ和歌山に移籍したなかで、目標だった4年目の最後に怪我をしてしまい、プレーできないまま、『これで引退するのは……』とやり残した感がありました」

選手時代は左利きの左SBとして運動量やキックを武器とした【写真提供:アルテリーヴォ和歌山】
選手時代は左利きの左SBとして運動量やキックを武器とした【写真提供:アルテリーヴォ和歌山】

 もう1年頑張ってみよう――。諦め切れず、石垣はすがるように5年目に臨んだが、納得のいくパフォーマンスはできず、シーズン途中の20年夏に現役引退を決断。そこで、セカンドキャリアとして頭に思い浮かんだのが、小さい頃に「サッカー選手」とともに夢に掲げていた「消防士」だった。消防士への憧れがひそかに強まったのは、中学生の時に起こった東日本大震災がきっかけだった。

「引退して次に何をしようかと考えた時に、真っ先に思い浮かんだのが消防士でした。子供の頃、まず消防車がかっこよくて、そして、そこから降りてくる消防士の方もかっこいいって(笑)。中学生だった2011年に東日本大震災がありました。現地で救助活動を行っている救助隊員の方の姿をテレビの画面越しで見て、単に『かっこいい』から、『自分も現場で人を助けられる人になりたい』と思ったんです。サッカー選手を辞めると決めたのが20年の夏の終わり。監督ら首脳陣に自分の意向を説明して、ラストシーズンの残りの日々は、サッカーをしつつ、勉強をし始めました」

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