今野泰幸が回想する南アフリカW杯と伝説の一言 エース降格の中村俊輔から学んだプロ意識、本田圭佑に感じた“野心”

今野泰幸(15番)はイジられ役としてチームの快進撃を陰で支えた【写真:Getty Images】
今野泰幸(15番)はイジられ役としてチームの快進撃を陰で支えた【写真:Getty Images】

【2010年南アフリカW杯戦記|今野泰幸】大会直前に怪我でバックアップに回る悔しさを味わう

 今年11月、いよいよカタール・ワールドカップ(W杯)が開幕する。森保一監督率いる日本代表はグループリーグでスペイン、ドイツ、コスタリカと同グループとなり、“死の組”とも言われる厳しい状況のなか、史上初の大会ベスト8入りを目指す。

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 7大会連続となる世界の大舞台。これまで多くの代表選手が涙を流し、苦しみから這い上がり、笑顔を掴み取って懸命に築き上げてきた日本の歴史だ。「FOOTBALL ZONE」では、カタール大会に向けて不定期企画「W杯戦記」を展開し、これまでの舞台を経験した人物たちにそれぞれの大会を振り返ってもらう。2010年、14年とW杯を2回経験した今野泰幸(南葛SC)が、自身初の出場となった南アフリカ大会を回想する。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小田智史)

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 今野にとって初のW杯は、プロ10年目の27歳で巡ってきた。南アフリカW杯は、日本史上2度目となる決勝トーナメント進出を果たした一方で、今野自身は途中出場のわずか1試合のみ。“複雑な記憶”として残っているようだ。

「予選リーグを突破できたのがすごく嬉しかったことは覚えています。ただ、個人としては、大会直前の(親善試合)コートジボワール戦で怪我(左膝靭帯損傷)をしてしまったので、それが印象に残っていますね(苦笑)」

 南アフリカW杯の岡田ジャパンは、本大会前にもがき苦しんでいた。2010年2月の東アジア選手権(現・E-1選手権)では中国に0-0で引き分け、ライバルの韓国に1-3と完敗。3月のアジアカップ予選バーレーン戦(2-0)の勝利で岡田武史監督の解任論は一度は下火となったが、4月のキリンチャレンジカップ・セルビア戦(0-3)、5月のキリンチャレンジカップ・韓国戦(0-2)と連敗を喫し、周囲は再び危機感を募らせていった。

 南アフリカW杯の2週間前、スイスのキャンプ地ザースフェーに入ったあとにチームキャプテンの川口能活が提案し、選手だけでのミーティングを実施。田中マルクス闘莉王が「俺たちはヘタクソなんだから、泥臭くやらないといけない」と口火を切ったのは有名な話だが、すぐに一致団結に至ったわけではなかったと今野は振り返る。

「(本大会の)メンバー発表があって以降、内容も悪く負けていたので、『このままW杯になったら、どうなってしまうんだろう』という不安もあって、選手たちは本当に追い込まれていました。中心選手が立ち上がって、全員でミーティングをしましたけど、意見の食い違いというか、それぞれが自分の思うことをぶつけ合った感じで、正直、1つにまとまることはなかったです(苦笑)」

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