森保ジャパンの10番・南野拓実、“不要論”は妥当か 戦力的価値を考察、欧州遠征でシビアに見極めるべきポイントは?
サイドバックやボランチ、1トップとの組み合わせで、南野の機能性は変わる
リバプールでもそうだったが、もともと圧倒的な個人技で勝負するタイプではない南野は周りの選手と良いコンビネーションができるほど、チャンスの起点にも関わりながらゴール前で決定的な仕事ができる。守備にしても連動性を意識しながら、前からボールを追える状況になれば、オーストリアのザルツブルクで学んだというプレッシング能力も発揮しやすくなる。
ドイツ戦やスペイン戦では日本がボールを持てる時間はおそらく50%を切ってくるだろう。そうなると自陣から広いスペースを一気に突くロングカウンターで、相手を裏返すようなシチュエーションも作り得る。そうしたことを踏まえると、南野の調子に関わらず、サイドには縦の推進力で勝負するタイプのほうが良いという意見も出てくるだろう。
ただし、森保監督は基本的には高い位置からボールを奪いに行くスタンスを強調しており、それができない時にどう戦うかという基準で、スタメンを構想していくはず。南野をこれまで通り左で起用するなら、サイドバックには外側を使っていける選手が必要になってくる。
モナコと違い、日本代表には伊東や堂安律(フライブルク)もいるので、右サイドで南野が使われるシチュエーションはあまり考えにくいが、サイドバックやボランチ、さらには1トップとの組み合わせでも、南野の機能性は変わってくるはずだ。
確かなのは最終的に、ゴールに近いところで仕事をするのが一番であること。スタートポジションがサイドであろうと、その道筋が見えれば良いわけだ。4-3-3であれば、やはり明確なトップ下がいない構造を利用して、タイミングよく中央に流れていくことが大事になる。
言い換えれば、それが見出せないなら三笘や今回の欧州遠征に招集された相馬勇紀(名古屋グランパス)のほうが、間違いなく特長を発揮できるだろう。あるいは本大会を見越して、南野が中央で生きるシステム、配置を改めてテストすることも悪くない判断だ。おそらくカタールW杯で10番を背負うと見られる南野。アメリカ戦では新ユニフォームもお披露目されるが、森保監督にはそうしたシビアなところを見極めてもらいたい。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。