“アラフォー”の大ベテランたちが織りなす異例のカタールW杯 選手寿命の延びがもたらした新領域

大ベテランのエースを生かす正しい方法 メッシは「主演」から「特別出演」へ

 メッシはカタール大会で5回目のワールドカップになる。最初の2006年はスーパーサブ的な役割だったが、それ以降はずっとエースとして君臨してきた。最も優勝に近づいた14年は、ディエゴ・マラドーナが「スポルティング・メッシ」と言っていたように、特にノックアウトステージ以降はその個人技でチームをファイナルへ引っ張り上げた。マラドーナを擁して優勝した86年のアルゼンチンとよく似ていて、その時は「FCマラドーナ」だった。18年のアルゼンチンも似たようなもので、メッシは1列目と2列目の隙間だけでなく、2列目と3列目の隙間にも下りて攻撃の起点になっていた。現在の川崎における家長のプレースタイルと似ていたかもしれない。

 しかし、おそらく今回のアルゼンチンはこれまでよりメッシへの依存度は減ると思われる。メッシなしでもほぼ攻守が完結しているからだ。伝統の球際の強さ、強靭なキープ力を活用して、例えば高い位置でボールを奪って攻撃できるので、組み立てからフィニッシュまでメッシを介さないと機能しない従来型とは変わってきている。

 映画やドラマの出演者を紹介するテロップの最後に画面に出てくる「特別出演」のように、今回のメッシは主演というより特別出演の大物俳優的な位置付けなのかもしれないし、それが大ベテランのエースを生かす正しい方法のような気もする。モドリッチやロナウドなど、大ベテランたちがどういうふうにチームと関わっていくのかは、これまでになかった見どころである。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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