VAR導入で変化するJリーグ 散見する“疑惑判定”の原因を元主審・家本政明氏が考察「いろいろなものがズレている」
【専門家の目|家本政明】VAR完全導入から2年目のJリーグ
森保一監督率いる日本代表が9月に欧州遠征(23日にアメリカ戦、27日にエクアドル戦)を予定しているなか、日本対アメリカ戦で「家本政明ぶっちゃけLABO」というオンライン同時視聴イベントを開催する元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏。今回はJ1で完全な導入後、今季2シーズン目を迎えているビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の与える影響、Jリーグの判定における審判の課題について語ってもらった。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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J1でVARが完全導入されて2期目となるが、国際サッカー連盟(FIFA)競技規則に基づくレフェリングスタンダードで、「選手生命を脅かすようなプレーの排除」が今シーズンJリーグの1つのテーマとして掲げられている。
そうした背景もあったなか、リーグ戦が進むに連れてさまざまな“疑惑判定”が話題を呼んできたが、特にVARに関しては審判団の課題も浮き彫りになってきているようだ。家本氏はVARの原則や、今シーズンのJリーグでの判定の印象について「いろいろなものがズレている。ギャップがあると思う」と見解を述べている。
「VARは『はっきりとした明白な間違い』と『見逃された重大な事象』しか助言ができないという大前提があります。一方、多くの人は『もっとVARに介入してほしい』と思っていますし、そういうシーンが今シーズンはたくさんあります。このギャップと仕組み上の問題が選手やチーム、見ている人だけでなくレフェリーをも苦しめているように思います」
そう語る家本氏は、9月10日に行われたJ1リーグ第29節の横浜F・マリノス対アビスパ福岡戦(1-0)で起きた横浜FMのFW西村拓真への足裏タックルの事象について振り返り、「例えば、アビスパとマリノスで西村選手が怪我をしたようなケースはレッドカードとなるボーダーだと個人的には思いますが、あれが『はっきりとした明白な間違い』、要は100%レッドカードと言えるのかというところで、審判側とそのほかの見ている人の認識が一致していないために大きな議論を生み出したということです」と双方の認識の差を感じているという。
「VAR側としては、おそらくこの場面で『はっきりとした明白な間違い』とは言い切れなかったから助言しなかった。しかし、多くの人はあのシーンの映像を見て、こんなにひどい行為なのになぜVARは介入しないんだ、VARの存在意義はなんなんだ、というところの認識のギャップと介入条件のハードルの高さによって、多くの人にとって望ましい結果になりませんでした」
事象に対する、審判側とそれ以外の“見ている側”でのギャップを指摘した家本氏。そして疑念が膨らんでいる背景は「もう1つある」と続ける。
「今シーズンの審判団の判定、判断、対応は納得感が薄いというか、不信感を抱いてしまうものが散見していると思います。それによって、多くの人がレフェリーに疑義を持ってしまっているのではないか」