日本代表の2トップ導入案は得策か 1トップへの固執は勿体ない?…“FW問題”&「久保システム」の可能性を検証

本大会で戦うドイツとスペイン相手に、いくつかのプランが必要

 ただ、同じ2トップでもオーソドックスな3ラインの4-4-2と中盤をダイヤモンドにするそれでは攻撃も守備も選手たちのタスクが変わってくる。ダイヤモンド型であれば、最終予選のオーストラリア戦から導入した遠藤航(シュツットガルト)、田中碧(デュッセルドルフ)、守田英正(スポルティング)の“3ボランチ”をそのまま生かせるし、鎌田大地(フランクフルト)を2トップの後ろに配置する形は魅力的だ。

 ただし、やはりダイヤモンドの問題としてサイドの攻撃と守備が流動的にならざるを得ないというのがある。相手との噛み合わせによってはサイドが数的不利になるケースが多いし、ミスマッチも起こりやすい。またここまで日本の最大の武器だった右の伊東や左の三笘薫(ブライトン)によるサイドからの仕掛けが使えないという分かりやすいデメリットもある。サッカーというのは完璧なシステムが存在せず、何かを取れば何かを失うもので、それを戦術的なタスクでカバーするものだが、短い準備期間でそこの成熟はほとんど期待できない。

 3ラインの4-4-2はこれまでも何度か時間限定で使っている。2トップに久保や伊東を入れるような形ではやっていないが、守備はこれまでの4-2-3-1とほぼ変わらないので、久保のスタートポジションを明確なトップ下にするのか、2トップから幅広く動き回らせるのかという違いでしかない。

 ただ、スペインのように中盤を支配してくるチームに対して、中央のフィルターに不安はあるのと、相手のプレスを回避するためのビルドアップをスムーズにできるかという課題は考えられる。ボールを握れる前提であれば正直、システムというのは二の次でも良いが、本大会でドイツとスペインが相手になることは踏まえて、いくつかプランを作って行く必要がある。

 コスタリカはコスタリカで堅実な守備と鋭いカウンターに対応しないといけないが、アジアで直面してきた課題のハードルがさらに上がる相手という認識で良いと考える。一方でドイツやスペインに対してはアジア予選でやってきた戦い方のクオリティーを上げるだけで勝ち切ることはほぼ不可能だろう。

 そこを森保監督がどうシミュレートしながら戦い方、それに伴うシステムと選手起用を考えていくのか。11月の本番直前にカナダ戦が入ったことで、本番前の仕上げよりは選手の最終テストの意味合いがより強くなったかもしれない。古橋が負傷明け、浅野やディフェンスの板倉滉(ボルシアMG)の負傷も伝えられるなかで、30人ほど招集するという9月の欧州遠征メンバーがどうなるのか。

 2試合でどういった起用法を見せるのか。それが本大会にどうつながるかなど、色々な注目はあるが、まずはメンバー発表を見守りたい。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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