「妥当じゃない」 J3岐阜×長野、PKとなったハンド判定に元主審・家本政明氏が考察「身体のなかに腕が収まっている」
長野側の抗議のシーンにも見解「毅然とイエローカードを示す方か望ましかった」
一方、判定の直後には、上田主審が長野の選手たちに囲まれる場面もあり、一時会場は騒然としていた。さらにこの後、鬱憤が貯まっていたのか長野のシュタルフ悠紀リヒャルト監督が、別のファウル判定で審判団へ怒りをぶつけ、イエローカードが出されている。
試合終了の笛が鳴った後も長野の選手が抗議を行うなど、殺伐とした雰囲気が流れた場面を振り返り、家本氏は長野の抗議に対して「チームが怒る気持ちはすごく分かる。ただ、やっぱり怒るにしてもちょっとやりすぎというか……。長野の選手たちの反応っていうのは度を越えている」と指摘しつつ、「レフェリーはそこにも毅然とイエローカードを示す方か望ましかったかな」と審判団の対応不足を嘆いた。
「(リスペクトを)逸脱した行為に関しては毅然としないと。結局その後の信用に繋がってくる。レフェリーが詰められて文句言われて、あたふたしているように見える。そうすると『自信なかったのこの判定?』となり、いろんな人の不信感が強くなってしまう。もっと上手いやり方があったと思うし、(判定に)加えて一緒に残念なシーンだった」
厳しい言葉を紡いだ家本氏だが、最後には「頑張ってほしいなと思います」と審判団へエールも送り、今後の改善への期待を示した。「たとえミスをしたとしても、それぞれのリスペクトがないといけない」と競技規則の根本を語った元主審は、Jリーグで“より魅力的なサッカーを実現するため”にという思いは今も変わっていないようだ。
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9月23日に行われるキリンチャレンジカップの日本代表対アメリカ代表の一戦で「家本政明ぶっちゃけLABO」というオンライン同時視聴イベントを開催する家本氏。参加者の意見や質問にNGゼロで回答しながら、独自のレフェリー目線でリアルタイム解説する“家本節”にも注目が集まる。
家本政明
いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。