伊藤洋輝はシュットガルト浮沈のキーマン 監督が求める“オフェンシブなプレー”とは?
マテラッツォ監督が求めるオフェンシブなプレー
チームとしての攻守のバランスには手ごたえを感じているが、ここから勝ち点を積み重ねていくためにはそれだけで十分なわけではない。そこに率先して取り組んでいく自覚が伊藤にはある。ルーキーイヤーの昨季29試合に出場し、1部残留に大きく貢献をした。そしてブンデスリーガ2シーズン目はさらなる責任感を持ってピッチに立っている。
「去年1年やってよりチームを背負う立場というか、責任感が増してくる。チームが勝ち点積み重ねられるようになるためにやっていきたいです。若いチームですし、(僕も)責任感もってもっともっとやっていきたいなと思います」
シャルケ戦に関して言えば、やはり1点先制するところまでは良かったが、同点とされたあとに攻撃の構築を失ったのは痛手だ。ペジェグリーノ・マテラッツォ監督は試合後の記者会見で、ストレートな厳しい感想を口にしていた。
「悪くない出足。良かったとは言わないが、悪くはない試合への入りだった。そして数的不利となった後も悪くないパフォーマンスを見せてくれた。だがその間のパフォーマンスは十分ではなかった。悪いプレーと言える。1-1で終わったことを喜ばないと。あまりにも多くのボールロストがあった。タイミングのズレなどいろんな理由があるだろうが、チームから落ち着きを奪うことになってしまった。守備はオッケーだが、失点後はオフェンシブプレーが構築されなかった。最終的にサッカーになっていなかった」
ビルドアップからの適切な展開と攻撃の構築。伊藤に懸かる期待は大きいのだ。驚くほどの冷静さでボールを収め、確かな視野の広さでパスコースを瞬時に見つけ、鋭く正確なパスで起点を作る。シャルケ戦でも鋭い縦パスや逆サイドまでのワイドパスを見せていた。だが、その頻度と精度はもっとアップさせることができるはずだ。
「そこに関しては監督に求められている部分なので、そこの期待にはもっともっと応えられるようになっていきたいと思います」
伊藤はもはや1人の若手選手ではない。チーム浮沈の責任感を担う中心選手の1人となることを期待されている。
「簡単なゲームはない。厳しい戦いをどう勝ち点3積み重ねていくのか、というところだと思う。この1ポイントを無駄にしないようにやっていきたいなと思います」
リーグ戦はまだ長い。勝ち星がないまま続くとどこかで焦りも出てくる。そんな時にどっしりと構える選手がいることが、どれだけチームに安心をもたらすことができるか。キャプテン遠藤航とともに、伊藤にはそんなチームの屋台骨となる存在へと成長してほしい。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。