シャルケ吉田の地位は不変 屈辱6失点でスピード不足に懸念の声も…“欠点カバー”の戦い方に浮かぶ信頼の証
守備バランスに手応えも、物足りなさがあるシャルケの攻撃
守備バランスとゲームのコントロール。6失点のウニオン戦の後だったからこそ、クラマー監督は引き分けに終わった試合でその2つを収穫として挙げていた。
「数的有利になったからと言ってすべてを投げ出して攻めることは難しい。シュツットガルトはカウンターの強力なチームだ。サイラス、ティアゴ・トーマスといったスピードが武器のFWがいる。彼らへ好パスが入り、守備ライン裏へ走り出したら、止めるのは難しい。だからこそ、終盤ゲームをコントロールしながら進めることができたのが大事だった」
守備バランスとチーム一丸としての戦いにそれなりの手応えを感じた一方で、攻撃面ではまだまだ物足りなさがある点は指摘せざる得ない。数的有利な状況で慌てて縦へ急いでしまい、ボールを落ち着けたり、リズムを変える段階が見受けられない。吉田もその点を指摘する。
「そういうのやってないからね。別に批判しているわけではなくて、シンプルにボールを前に蹴っていくというサッカー。別に崩し方がどうこうとかではなくて、もともと持っているものが(そこなので)。そこの難しさは初戦から感じていますけども、今に始まったことではないです」
確かにシャルケは単発な仕掛けが多い。まだ攻撃の準備が整っていない時でもボールを前線に預けようとしてしまうシーンだって少なくない。そんななか、吉田が相手のプレスをスッと外して、ボールを落ち着けて味方が動きなおす時間を作り出すプレーを見せていたのは印象的だ。
チームとしてシンプルな仕掛けでも点が取れるようになることと攻撃の起点作りを整理していくことは欠かせないし、昨季2部リーグ得点王のFWシモン・テロッデが今季初ゴールを決めたのは明るいニュース。
クラマー監督は「テロッデはチームにとって重要な選手だ。数試合ゴールを取れなくてもいつでも重要な選手。信頼している。ほかのFWもそうだ。ヨルダン(・ラーション)も初スタメンで良いプレーを見せてくれたし、チャンスもあった」と今後へのポジティブな心境を語っている。
残留への道のりは険しい。吉田を中心とした守備とテロッデを中心とした攻撃がかみ合い、最少得点でも勝てるようにチームとしての確かな方向性を築いていきたい。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。