熾烈なJ1リーグ残留争い、8クラブの「救世主候補」 危険なG大阪、最下位の磐田…苦境打開への“推し”戦力は?
縦の迫力まで失われている福岡、打開への“特効薬”はFWの得点
■14位:湘南ベルマーレ
救世主候補:山田直輝(MF)
残留ミッション難易度:★★
代表級の才能を持ちながら、度重なる怪我に泣かされてきた攻撃的MFは今シーズンも、序盤戦と後半戦に2度の離脱があり、まだ得点を取れていない。しかし、第28節の川崎フロンターレ戦では後半途中からの出場ながら、MF阿部浩之との鮮やかなコンビプレーから決勝ゴールをアシストした。続く横浜F・マリノスとの試合ではワイドに流れてのクロスなどが得点に結び付かなかったが、プレー時間を増やしながら状態を高めている。まずは次の清水エスパルス戦に勝てば、ライバルより大きく優位に立てる。屈強なディフェンスを相手に崩しのアクシデントをもたらせるか。もちろん虎視淡々とゴールも狙っているだろう。
■15位:アビスパ福岡
救世主候補:ジョン・マリ(FW)
残留ミッション難易度:★★★
ここまでリーグ最少の21得点だが、頼みの綱であるディフェンスも揺らぎ出している。天皇杯では準々決勝でJ2ヴァンフォーレ甲府に敗れたが、まだルヴァン杯が残っているので、同勝ち点のガンバ大阪より、やや厳しい日程の戦いになりそうだ。コロナ禍の今シーズン、ベンチメンバーすら揃わない状況でカップ戦を乗り切るなど、過密日程で1試合にかかる負担も大きくなった。ただ、そうしたチーム事情を踏まえても、本来持っている縦の迫力まで失われているのは気になるところだ。そんな状況を打破する一番の“特効薬”はFWの得点だ。今夏、福岡に復帰したカメルーン人のジョン・マリは、前線で存在感のある動きを見せながらも、短い出場時間でなかなかゴールネットを揺らせていない。もっともリーグ戦で唯一の先発となった第25節の鹿島アントラーズ戦では4本のシュートを記録。ゴールポストに嫌われる場面もあった。長谷部茂利監督は守備の貢献度なども考えて前線の起用法を判断しているかもしれないが、もっと出番を与えたほうが、少なくとも相手ディフェンスは嫌がるのではないか。
■16位:ガンバ大阪
救世主候補:福田湧矢(MF)
残留ミッション難易度:★★★★
勝ち点28、得失点差で入れ替え戦の16位にいるが、第28節のサガン鳥栖戦のパフォーマンスや残り6試合の対戦カードを考えると、かなり危険な状況にある。次はホームのFC東京戦だが、その後に優勝争いを演じる横浜F・マリノスやヴィッセル神戸、ジュビロ磐田との残留争いの“6ポイントマッチ”しか残っていない。神戸と磐田に勝てば+6で少なくとも16位確保は見えてくるが、自動残留圏内でのフィニッシュを勝ち取るには少なくとも、もう1つは勝ち点を積み上げたい。そのためのプラスアルファの力になりそうなのが、MF福田湧矢だ。5月の神戸戦で負傷交代してから、鳥栖戦で16試合ぶりの復帰となったが、短い時間でも一人躍動感が違っていた。サイドから違いを見せることで、前線のFWパトリックやFW鈴木武蔵の決定力もより発揮されやすくなるはずだ。ムードメイカーでもあり、そこにゴールやアシストなど、目に見える結果が付いてくれば、チームも波になる。心身両面でチームに推進力をもたらせる選手だ。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。