英プレミア「最も恥ずべき」ゴール取り消しと物議 “ミスジャッジ認定”に家本政明氏が見解「この程度がファウルかという全体的な見解」
なぜミスジャッジと発表? 家本氏が考察「今回の発表によって守られる可能性がある」
では、なぜPGMOLは、ミスジャッジということを改めて発表したのか。家本氏は次のように考察する。
「そもそも、あの左足のコンタクトが、反則と言えるものだったのか、そしてVARが介入することが望ましいシーンだったのかということでしょう。プレミアリーグは、コンタクトに対する判定基準が世界の中でも非常に高く、『この程度の接触が本当にファウルか?』という全体的な見識だと思われます。反則の基準は、国によって微妙に違いますが、イングランドでは、これは彼らの考えるフットボールとして受け入れられないものだったのでしょう。そこでPGMOLは、公式見解を出してVARの過剰な介入だと説明したのだと思われます」
今回、PGMOLがミスジャッジと認めたことで、主審とVARへの批判は強まることになったが、将来的にはこの発表が審判を救う可能性が高いと家本氏は指摘した。
「当該のレフェリーにとっては厳しいかもしれませんが、彼らはプロであること、そして全体的なレフェリーのことを考えると、今回の発表によって守られる可能性があります。今後に向けて『あの時、ああいう発表がされましたよね』という前例ができたからです」と語り、今回のPGMOLの発表が今後に向けた基準作りにつながることを期待した。
サッカー界に、急速に浸透していったVARだが、まだ歴史は浅い。サッカーがテクノロジーをどこまで取り入れていくべきかについては、世界中で議論が絶えない。そうしたなかで、プレミアリーグで起きた今回の出来事は、改めてVARの役割とフットボールの未来を考えるきっかけを提供してくれたと言えそうだ。
家本政明
いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。