ソシエダ久保建英のアトレティコ戦を現地記者はどう見た? “ダメージを与える役割”を高評価「シルバに代わって上手く遂行した」
【スペイン発コラム】アトレティコ戦、ソシエダ加入後初のベンチスタートとなった久保
日本代表MF久保建英が現地時間9月3日にホームで行われたリーガ・エスパニョーラ第4節アトレティコ・マドリード戦、レアル・ソシエダ加入後初のベンチスタートとなった。
この一戦に向けてイマノル・アルグアシル監督が準備を進めるなか、久保はコンディション不良により全体練習を2日休まざるを得なかった。一方、クラブはその間、FWアレクサンデル・イサクのニューカッスル電撃移籍を受け、即座に新たなFW探しに動いていた。
まず昨季レンタル所属していたノルウェー代表FWアレクサンダー・セルロートを再びレンタルで復帰させると、さらに移籍市場最終日にクラブ史上の移籍金最高額でナイジェリア代表FWウマル・サディク獲得に成功した。これによりミケル・オヤルサバルとカルロス・フェルナンデスが長期離脱中で手薄だったFW陣が一気に強化されることとなった。
このような状況で迎えたアトレティコ戦、久保が昨季のリーガで唯一得点を挙げた相手とあり、先発出場し再びゴールを決めてくれるという期待があったものの、リーガ4試合目にして初めて控えに回ることとなった。
久保をベンチに置いた理由について、アルグアシル監督は試合後、「この1週間、タケは通常のトレーニングができなかったが、私は今日、勝つためにできる限りのベストメンバーを組んだ。ダビド(シルバ)のレベルは高く、(モハメド=)アリ・チョーは前線でご覧のとおりのパフォーマンスを見せてくれた。またセルロートやサディクも良かった」と体調面の問題に加え、チームメイトのレベルの高さを挙げていた。
ソシエダはマドリードにリーガでここ5試合勝てていなかった。そんな苦手な相手に対し、アルグアシル監督はいつもどおりのダイヤモンド型の4-4-2で臨み、2トップにセルロートと、前節エルチェ戦でPKを誘発したチョーを先発起用した。
試合を通じてイエローカード9枚が飛び交う白熱した展開のなか、アルバロ・モラタによる先制点でアトレティコが開始5分にリードを奪う。その後、ソシエダが後半10分にチョーのクロスから、サディクが同点弾となる加入後初ゴールを決めたことで、会場の盛り上がりは最高潮に達した。
久保が投入されたのは1-1で迎えた後半26分。今季のホーム勝利を求めるサポーターに後押しされたかのように、アルグアシル監督は決勝点を狙い3枚替えを敢行。シルバに代わりトップ下に入った久保は、後半31分にペナルティーエリア正面から巧みなスルーパスを出し、サディクがゴールネットを揺らすも残念ながらオフサイドでノーゴール。また後半44分にCKが直接ゴールに飛ぶも、枠をわずかに外れ逆転とはならなかった。チームは終盤、アトレティコの猛攻を受け、スリリングな展開となるも最後まで凌ぎ切り、強豪相手に1-1の引き分けで試合を終えた。
移籍後初アシストが幻に終わったこの日の久保について、ソシエダの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は「プレス時には2番目の選手として働き、相手最終ライン間で上手く動き回り、ゴールが取り消されたもののサディクに見事なパスを送った。さらにあと一歩でコーナーキックからゴールを決めるところだった」と攻守の働きを評価し3点(最高5点)を付けた。一方、スペイン紙「マルカ」「AS」の評価は1点(最高3点)だった。
高橋智行
たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。