長友佑都の「PK→FK」判定変更シーン、元主審・家本政明氏が考察 「これはノーファウル」と語る理由とは?
両選手の反応から心理も分析「悪意はなく、たまたま当たって倒れてしまった感じ」
さらに家本氏は、両選手のプレーと判定後の反応から、心理を読み解いていく。
「仲川選手にダイブしようとしている素振りは、一切ありません。悪意はなく、たまたま当たって倒れてしまった感じです。それでも、長友選手の足が当たったという感触はあり、それでボールを運べなかった認識はあったと思います。一方、長友選手は理解に苦しむ表情をしていますが、もしかしたら、仲川選手の足に当たった感覚が薄く、手に関しても距離を測るように触っただけだったのに『これでファウルを取るの?』という表情になったのではないでしょうか」
また、VARでファウルの位置の確認が行われた結果、PKではなく、直接FKとなった。この判定は難しかったことで、確認に時間を要したのではないかと分析する。
「VARのチェックが、4分から5分くらいかかりました。反則がどこで起きたかなのですが、DAZNの映像を見る限り、なかなか明確に外とも中とも言えません。コンタクトがあったのはファクトなので、それを確認したはずです。接触には始点と終点がありますが、ファウルとなる基準の強さになったところが、ファウルの起きた場所になります。僕が見た映像では、足の接触があった始点はエリア外、終点はペナルティーラインに差し掛かるところでした。検証に5分ほどの時間を要しましたが、明確にエリア内と判定できなかったのであれば、もう少し早く、主審の判定をフォローして試合を再開した方が良かったと思います」
判定の妥当性を指摘した家本氏だが、このジャッジが極めて難しいものであることも理解をしてほしいと訴える。
「反則とすると、イエローというジャッジは正しいのですが、僕が映像を見る限り、そもそも反則とするのは、少し厳しかったかなと思います。長友選手がこういう表情になることは、非常に理解できます。ただ、映像で見て『こうだ』と言うのは簡単ですが、実際にピッチでジャッジするのは簡単ではありません。長い距離を走っているなかで、数十メートル先では、接点が手と足の複数になっています。判断することが、意外と難しいシーンだと思いますね」
審判を欺こうとせずにゴールへ向かっていった仲川、相手のカウンターに対して懸命な対応を見せていた長友。家本氏は、Jリーグを代表する両選手が見せた攻防における判断の難しさと判定の妥当性を考察していた。
家本氏がレフェリー目線のリアルタイム解説をしたJ1第28節の鹿島対浦和のオンライン配信イベント「家本政明LABO」は、今月5日から見逃し視聴チケットが購入可能(詳細は「家本政明LABO」公式サイトまで)。忖度ゼロ・NGゼロで回答した家本氏の“ぶっちゃけトーク”は必見だ。
家本政明
いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。