カタールW杯行きの日本代表FW「序列検証」 軸だった大迫が後退、唯一の“選出濃厚”は?

ベルギーに移籍した上田、スピードの浅野がどこまでアピールできるか

 予選突破を決めた今年3月のオーストラリア戦でスタメン起用された浅野はドイツ1部のボーフムで、主に右サイドで起用されている。ドイツカップ(DFBポカール)の1回戦では見事なゴールを決めたが、リーグ戦でなかなか結果を出せず、チームも開幕4連敗を喫してしまった。浅野自体の動きは悪くないが、チームの負けが込んでくると、特にアタッカーはスタメンの入れ替えなども起こりやすい。これまでの序列から、9月の代表活動に招集されるはずだが、代表合流までの試合でFWとして勝利に導くゴールが欲しい。

 欧州組では、今夏に鹿島アントラーズからベルギー1部セルクル・ブルージュに移籍した上田綺世が気になるところ。大迫と同じタイプではないが、日本人FWの中では182センチとサイズもあり、本格派の1トップ候補として森保監督も期待しているはず。セルクル・ブルージュでは上田が鹿島や代表で味方から黙っても来るようなパスは望めない。難しい状況にあるのは明らかだが、最初からいい動き出しをすれば味方がパスをくれる恵まれた環境であれば、このタイミングで海外挑戦する意味があまりない。

 リーグ第6節のズルテ・ワレヘム戦ではスローインの流れからボックス内で味方のパスを受けて、待望の初ゴールを記録した。どのような形からでもゴールという結果を出すことで、周りからの信頼を高めることがきる。このまま行けば、少なくとも9月のドイツ遠征のメンバーから外れる可能性は低いだろう。A代表は3年前のコパ・アメリカ(南米選手権)から数えて、9試合で無得点というFWとして悔しい結果になっているが、アメリカ戦とエクアドル戦の2試合で流れを変えたい。

 そのほかの欧州組FWを見ると、トゥールーズのリーグ・アン昇格の立役者になったオナイウ阿道がここまで途中出場が続いており、直近の代表活動から外れていた選手としてはアピールが十分とは言い難い。スペイン2部アラベスの原大智は第3節で後半途中から出たが、状況は微妙なところだ。

 そして、ベルギー1部シント=トロイデンの林大地は開幕から2試合連続ゴールなど、好調をアピールしていたが、第6節メヘレン戦で左足首靭帯損傷の怪我を負ってしまった。それが元日本代表FW岡崎慎司の加入を後押ししたという意味では皮肉な結果だが、ポストプレーが得意で、最も大迫の代わりが務まる彼の長期離脱は森保監督にも痛手なのではないか。

河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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