「いい審判」「ダメな審判」…“3大NG項目”とは? 元レフェリー家本政明氏が明かす共通項と見分け方
「いい審判」が引き出す選手の能力と名シーン、杓子定規ではなく柔軟なポジショニング
では「審判」とは何者かを考えた時、競技規則の番人なのか、フットボールの魅力と価値を高める人なのか。前者は競技規則をきっちり運用する人。競技規則でうたっているのが、規則の適用・運用は手段の1つということ。その手段の目的は何かと言えば、みんながフットボールを楽しむことに尽きます。そして、そんなフットボールの魅力と価値を高めることができるのが「いい審判」と言えるかと思います。
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巧みなレフェリングは、選手の持っているポテンシャルを最大限発揮させることができ、記憶に刻まれるような名シーンを生み出します。またファン・サポーター目線で見ても、レフェリングによる余計なストレスがゼロであれば試合を存分に楽しめるので、結果的にフットボールの価値が高まることになります。
「いい審判」は、離れすぎず近すぎずの適切な距離感を保っているのも特徴です。基本的にはボールから10~15メートルぐらいの距離感。さらにエリア、シチュエーション、試合の流れに応じて、その距離感をさらに近づけたり、さらに離したり臨機応変に適切な距離感を保っているのが大前提になります。そのうえで、目立たないポジションにいるかどうか。目立たないということは、プレーや試合の邪魔になっていない。それでいて、何か事象があった時には近くで見ていて、場をすぐさま収められる。
では、どうしたら適切な距離感が保てるのか。先の展開を読む洞察力、プレーに付いていく運動量、チームスタイルの分析など、複合的な要因があります。
「対角線式審判法」というポジショニングの基本はありますが、チームのスタイルや選手のプレースタイルによって適切な距離感の意味は変わってきます。堅守速攻型か、ポゼッション型か。プレッシングは前線からか否か。そうしたチーム戦術と選手のプレースタイルによって、レフェリーのポジショニングも大きく変わってきます。裏返せば、杓子定規に同じポジションを取るのは「ダメな審判」の典型であり、柔軟に対応できるのが「いい審判」とも言えます。
優先されるべきは、フットボールであり、選手であり、チームの戦術であると考えています。「いい判定をするために、いいポジションを取る」は、優先順位としてあくまで2番目。仮に、Aという地点がレフェリーにとってベストポジションだったとしても、そこに立つことによってプレーや戦術の妨げになるのであれば、Bというセカンドベストを選ぶべきです。
どのポジションを取っても、必ずメリットとデメリットがある。それを場面ごとに瞬時に判断し、試合の邪魔にならない範疇で最良のジャッジが求められる。レフェリーの判定がブレる時、その多くは適切なポジショニングを取れていないことが原因になっています。