「いい審判」「ダメな審判」…“3大NG項目”とは? 元レフェリー家本政明氏が明かす共通項と見分け方
【インタビュー】試合の進行を妨げる「ダメな審判」 マイナス要因をいかに減らすか
9月3日のJ1リーグ第28節の鹿島アントラーズ対浦和レッズ戦で「家本政明ぶっちゃけLABO」というオンライン同時視聴イベントを開催する元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏。2010年にサッカーの聖地ウェンブリー・スタジアムで日本人として初めて主審を務め、11年にFAカップでイングランドサッカー協会に登録していない審判として初めて主審を担当し、Jリーグでも主審として歴代最多516試合担当という経歴を持つ家本氏が、「いい審判」「ダメな審判」について持論を展開した。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・大木勇)
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まず「いい審判」には、人それぞれの捉え方や考え方があると思います。例えばファン・サポーター目線、リーグや組織目線、レフェリー目線などでも変わってきますし、状況次第で判断は変わりますが、「ダメな審判」にはいくつかの共通項があります。
1つ目は、試合の邪魔をすること。例えばパスコースに入る、選手が行きたいスペースに入ってしまう。レフェリーが試合や選手の邪魔をすることになる。フットボールの魅力と価値を下げる要因になります。プレーの邪魔になる場面が頻発する審判、というのを想像してもらえれば分かりやすいかと思います。
2つ目は、試合をノッキングさせること。スムーズな試合進行ができていない状態になります。例えば球際での攻防があり、「さぁ今から次の展開!」という時に笛が鳴る。あるいは「さっきの反則と今のプレー、何が違うの?」という場面が頻発する。判定基準が分かりづらく、判定の幅が広すぎる、笛を吹くタイミングなどで試合をノッキングさせるレフェリーというのは、やはり乗れない。当然、選手も観客も、今ひとつ試合に入り切れない場面が続くことになります。車の運転で言うと、スーッと行くのか、ブレーキやアクセルでガシャガシャするのは乗っていて心地良くない。それはレフェリングにも相通じるものがあります。
3つ目は、あまりに高圧的・上から目線・傲慢・偉そうなこと。南米の試合などでみなさんも目にしたことがあるかと思いますが、選手がガッと(抗議しに)来た時、レフェリーも同じテンションでガッと行って収める方法があります。目には目を歯には歯を、というやり方があるとはいえ、それが世界共通なのか、あるいは日本人に合ったいいレフェリングかと言うと、日本には合わないと思います。ちょっと引いてしまう感じもあります。誠実さ、真摯さ、丁寧さがあり、選手らへの敬意や配慮があるというのは大事なところだと思いますし、それを感じさせないレフェリーが信頼を勝ち取るのは難しいと思います。
ほかにも「ダメな審判」の共通項はありますが、この3つはできるだけないほうがいいNG項目になります。この3大NG項目がなければ「いい審判」かというと、それはまた別の話ですが、少なくともこれらがなければ、レフェリーが試合の進行を妨げることはなく、選手はスムーズにプレーができ、見ている人も心地良く試合に没入できるかと思います。
最低限の基準をクリアすれば、レフェリーの存在はあまり気にならず、試合は心地良い流れになっていきます。少なくともマイナス要因を作らないこと。それが「いい審判」の最低限のラインであり、ベースになる部分でもあります。