マンチェスター・Uの現在地 10人の戦いでマンチェスター・Cを押し返し、復活の兆しが見えたレッド・デビルズ

指揮官が発した「私にも数を勘定することはできる」という言葉の真意とは

 

 昨季は2位に大躍進したリバプールは今季バルセロナに移籍したスアレスの穴が埋まらず、下位との試合で勝ち点を落とし続け、今季こそ欧州CL出場権と勇んで臨んだポチェティーノ・トットナムのシーズン前半戦は、期待はずれの結果が続き、両チームともに勝ち点は『14』と低迷。また、トットナムと並ぶ4強候補のダークホースだったエバートンは、マルティネス2年目で伸び悩み、勝ち点『13』。この3チームは来週にもマンチェスター・Uに抜き去られる可能性がある。

 それに、勝ち点22の2位は見事だが、サウサンプトンの今季の強豪対戦は開幕戦のリバプールと第7節トットナムの2戦だけ。しかもどちらにも負けており、この結果からも最終的に欧州CL出場権を確保するには力が足りないことは明らかだ。

 力不足は5位ウエストハム、6位スウォンジーも同様で、シーズンを通して現在のペースを保つことは難しく、いずれは急激に勝ち点を落とす時期も来る。

 こうした状況で、「首位チェルシーとの勝ち点差は大きく広がっているが」と地元記者にたずねられたファン・ハールは、「それは分かっている。私にも数を勘定することはできる」と答えた。

 その「私にも数を勘定することはできる」という発言をあえて深読みすれば、「優勝は確かに難しい。しかしチェルシー以外の強豪は勝ち点を落としている。先週そのチェルシーを相手に試合終了間際に同点に追いつき、今週は10人の戦いでマンチェスター・C にも互角に戦った。追撃態勢は整いつつある。まずは欧州CL復帰だ」という反撃の示唆にもつながるのではないか。

 234億円も余計に使った上、10試合終了時点では昨季のモイーズより悪いオランダ人名将だが、チームが徐々に良化して、強豪相手でも引けを取らない試合をするようになった。

 開幕ホームでスウォンジーに負け、香川のマンチェスター・U最後の試合になったリーグ杯第2回戦では、英3部リーグ所属の超格下MKドンズに歴史的な0-4大敗を喫して8月は危機的だったが、そうした最悪の状態からは完全に抜け出したといっていいだろう。

 そして4強を争うと目されるライバルチームもチェルシー以外は不振というツキにも恵まれ、1年5か月に渡るファーガソン監督勇退から続いた転落にようやく別れを告げたマンチェスター・Uは今、欧州最強戦復活への道にその力強い第一歩を踏み出そうとしている。

【了】

森昌利●文 text by Masatoshi Mori

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

 

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