レアルの世代交代、若返り以上の効果あり? 代替が効かない“三角地帯”消滅も…新トライアングが秘めるプラスアルファ
【識者コラム】レアルの栄光を支えてきた3人選手の存在と世代交代
スペインのメディアが「バミューダ・トライアングル」と称賛した一角が崩れた。MFルカ・モドリッチ、MFトニ・クロース、MFカゼミーロの三角地帯ではボールが消えるからバミューダ・トライアングルらしいが、その1人だったカゼミーロがマンチェスター・ユナイテッドへ移籍したのだ。
レアル・マドリードの栄光を支えてきた3人の関係は絶妙だった。戦術どうこうというより、「人」に依存した関係性だっただけに部品を交換するようなわけにはいかない。ただ、世代交代をしなければならない時期だったのも間違いない。
今季から加入したMFオーレリアン・チュアメニがカゼミーロの後釜になりそうだ。フランス代表の22歳、ASモナコからの加入である。187センチの長身でフィジカルコンタクトに強く、パスワークも上手い。チュアメニに先駆けて昨季はMFエドゥアルド・カマヴィンガが加入している。こちらもフランス人で19歳、あらゆるポジションをこなすマルチプレーヤーだ。
フランス人の若手2人を獲得したのは、おそらくFWキリアン・ムバッペを獲得するつもりだったのと関係があるのかもしれない。結局、ムバッペはパリ・サンジェルマンとの契約を更新して移籍は実現しなかったのだが、カゼミーロの退団で世代交代は一気に進みそうだ。
4-1で快勝したリーガ・エスパニョーラ第2節セルタ戦では、チュアメニとカマヴィンガが先発。モドリッチと新たなトライアングルを組んだ。この2人と、すでに右ウイングとしてレギュラーを確保しているMFフェデリコ・バルベルデの3人の平均年齢は21歳になる。
バルベルデはMFとしてもプレーしていて、近い将来はこの3人が新しいトライアングルになるのだろう。FWカリム・ベンゼマとのコンビで昨季のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)優勝の立役者だったFWヴィニシウス・ジュニオールも22歳。いつの間にか着々と若返っている。
FWクリスティアーノ・ロナウドが去り、DFセルヒオ・ラモス、DFラファエル・ヴァラン、DFマルセロがいなくなったが、レアルの強さは維持されている。人に依存したチームなのに、人が代わっても何事もなかったかのようだ。
レアルの世代交代は単に平均年齢が若くなったという以上の効果を生み出すかもしれない。優勝した昨季のCLもラウンド16以降は苦戦の連続だった。その要因の1つは高い位置でのプレスができなかったことだ。
巧妙で高速なカウンターアタックによって奇跡的な逆転劇を重ねたが、同じことを繰り返すのはバミューダ・トライアングルを持ってしても難しいだろう。モドリッチ、クロース、カゼミーロの経験と阿吽の呼吸は代替が効かないものではあるが、若さが違うプラスアルファをもたらしてくれるのではないか。
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(西部謙司 / Kenji Nishibe)
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。