衰え知らずのベテランがズラリ J1終盤戦でチームを救う“イケてる”30歳オーバー10人を厳選
湘南はタリクのゴール数が残留の鍵
■タリク(湘南/34歳/FW/22試合1得点)
ノルウェー代表でもアーリング・ブラウト・ハーランドなど、若手選手から尊敬を集めてきた”兄貴”であり、誰よりもハードワークして、戦う姿勢を見せ続ける。それはスタメンでも、ベンチスタートでも変わらない。もちろんメンタルだけでなく、前からの守備、2列目からの飛び出しなど戦術の理解力も高く、山口智監督が目指すアグレッシブでクオリティーの高い攻撃を牽引している。
唯一、不足しているのがフィニッシュの精度で、ここまで25本のシュートで1得点。惜しくもGKに弾かれたり、枠外だったり、サイドネットに嫌われるケースが多い。残り9試合で”兄貴”のゴールが生まれれば、湘南が残留以上の成績に近く。
■城後寿(福岡/FW/36歳/5試合0得点)
”気持ちの伝わるプレー”とよく言われるが、この男からそれを感じ取れなかったことが、筆者の記憶にはない。好不調の波はあっても、常に全力前身のスタイルで、18シーズンにわたり福岡を引っ張り、支えてきた”生ける伝説”だ。
昨年はJ2時代も含めて最も少ないリーグ戦12試合、キャリア初の無得点に終わった。現役続行を決断して臨んだ今シーズンも前半戦はベンチ外の期間が続いたが、ルヴァンカップや天皇杯で奮闘する姿が目に付いた。そして多くの新型コロナウイルス陽性者が出て、ベンチメンバーも揃わないなかで迎えたルヴァン杯の準々決勝、神戸戦で勝利の立役者となった。終盤戦に差しかかった現在は残留が懸かるリーグ戦でも起用されており、タイトルの可能性を残す2つのカップ戦も含めて、心身両面で頼りになる存在だ。
■レオ・シルバ(名古屋/36歳/MF/25試合1得点)
攻守にわたる強度の高いサッカーを目指す長谷川健太監督のサッカーで、3-4-2-1で稲垣祥とボランチのコンビを組む。3-1-4-2の時は中盤の底からチームを支えて、安定した3バックの手前で高いボール奪取力とタイミングよく縦に持ち出すドリブルなどで、チャンスの起点として機能している。
守備の強度とリスクマネージメントは常に安定しており、ここまでリーグ戦すべての試合に出場している。終盤に永木亮太や別の攻撃的な選手に代わって退くことが多いが、指揮官にとってチームの土台として計算できる選手だ。
■岩尾憲(浦和/34歳/MF/20試合1得点)
徳島時代から師事するリカルド・ロドリゲス監督が絶大な信頼を寄せる選手だけに、開幕前から”新たな頭脳”としての期待が高まった。しかし、コロナ禍でチームが安定しないなかで、岩尾自身も適応に苦しみ、前半戦はミスが続く時期もあった。しかし、チームの状態が良くなるに連れて設計者として存在感が高まり、相手の守備に応じたポジショニングからポゼッション、インターセプトからのカウンターの起点など、幅広くチームを支える。
また前迫雅人コーチが担当する”デザインされたセットプレー”のキッカーでもある。浦和での重要性は増すばかりだが、本人がいい意味での危機感をなくすことはない。ACLの準々決勝で勝利したあとにも、浦和というJリーグ屈指のクラブにおいて「自分の代わりはいくらでもいると思っている」と語っており、あくまでチャレンジャーとして、中盤から浦和をオーガナイズし続ける。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。