閉塞感漂うハリルJ “ザック流”の復活と、ボールロスト「42回」が示すキーマン封じの罠
頼みのトリオがボールを失いリズム作れず
味方から受けたパスを、確実に次の選手につなげることができたかを見るためには、受けたパス数から出したパス数を引けば良い。
例えば10本のパスを受け、それを10本確実に味方に渡すことができていれば10本-10本=0となる。10本受けて、5本しか味方に繋げられていなければ10本-5本=5本で、それがその選手がロストした数だ。しかし、受けたパスをシュートで終わるケースもある。シュート2本としよう。パス受数10本-パス出し数5本-シュート数2本=3本がロスト数となる。
日本は欧州のトップリーグでプレーする攻撃陣のキープレーヤー3人が、ボールロストのトップ3となっている。UAEから見れば、気をつけるべき選手は徹底的に押えていたということだろう。日本から見れば、信頼すべき3人の選手で40回以上もボールを失っていることになる。信頼すべき選手にパスが出た場合、味方は人数をかけてサポートする、あるいはゴール前に飛び込むというアクションを行う。そこで奪われて、少ない人数の陣内に攻め込まれたら何が起こるだろうか。
一方、UAEのキープレーヤーは司令塔のオマルと2得点したハリルだ。チーム全体のパス本数が日本が590本、UAEが288本と倍以上の差をつけながら、キーマン2人には日本の前線とほぼ変わらない本数のパスを受けさせている。抑えるべきポイントが明確になっていたのに、それが徹底できていたとは言い難い。
指揮官とエースが奇しくも同じ言葉で表現した「受け入れがたい」結果。それは決してレフェリーの笛ではない。本当に「受け入れがたい」のは、日本が1993年に「ドーハの悲劇」を経験し、様々な改革を行ってアジアの王者となり、そしていつしか追われる立場となったにもかかわらず、演じるサッカーに「進化」と「変化」が見えないことだ。今回の敗戦は、現在の日本サッカー界が突きつけられた警告として、真摯に受け止める時なのかもしれない。
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データ提供元:Instat
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フットボールゾーンウェブ編集部●文 text by Football ZONE web
田口有史 ●写真 photo by Yukihito Taguchi