閉塞感漂うハリルJ “ザック流”の復活と、ボールロスト「42回」が示すキーマン封じの罠
就任直後に見せていた変化への兆し
まずはUAE戦のデータを検証する前に、ハリルホジッチ体制になってからの日本代表が示した数値を振り返ってみたい。2015年3月31日、ハリルホジッチ監督に代わって2試合目、対戦相手は直近4試合で1勝2分1敗と五分の戦績だったウズベキスタン代表だが、この日、新生ハリルジャパンは5-1で圧勝している。驚くべきことに、この日の両チームのポゼッション率は日本45%対ウズベキスタン55%と、日本がウズベキスタンとの試合で初めてポゼッション率が50%を割った。これにパスとシュートのデータを加えると、ハリルホジッチ体制となって以降の日本代表の新しい姿が垣間見えてくる。
2008~12年に行われたウズベキスタンとの4試合全てにおいて、日本がパス数で上回っていたが、08年のゲームを除けばウズベキスタンの方が多くのシュートを放っていた。それらの現象を分かりやすくするために、シュート効率という指標を使ってみた。1本のシュートを打つのに平均で何本のパスを繋いだか、という指標だ。08年はウズベキスタンのシュート数が少なかったので日本38本に対して、ウズベキスタン44.8本と日本の方が効率が良かった。しかしそれ以降は、09年は31%、11年は29%、12年にいたっては43%もウズベキスタンの方が効率が良かった。
しかし15年の試合では、逆に日本がウズベキスタンより約2倍も効率の良い攻撃を行っていた。日本が17.5本で1本のシュートを打っていたのに対して、ウズべキスタンは35.3本のパスを回さないと1本のシュートにたどり着けなかったことになる。ボールを失わないためのパスなのか、得点を目指してシュートに結びつけるためのパスなのか、パスの目的を間違えなければきちんと結果が伴ってくるということだ。
これまで、日本人の良さを、「規律を守る」、「敏捷性(アジリティー)の高さ」「グループワークができる」こととし、「Japan Way」を創り上げようとした。実際にスペイン代表、あるいはFCバルセロナの華麗なパス回しに魅せられ、日本人の体格と身体能力とスペイン人との類似性から判断し、「これこそが日本が目指すべきJapan Wayだ!」と若年層からトップレベルまで、一貫してポゼッションサッカーを目指した過去数年間の結果をこの表は物語っている。
それに対し、就任直後のハリルホジッチ監督がまず行ったことは、いかに早く効率的に相手ゴールに近づくか、いかに自分たちのゴールに近づけさせないかという原理原則からスタートしていることだ。規律、敏捷性、チームワークは日本が一番という固定観念からのスタートではなく、2014年W杯に代表される近年のサッカーのトレンドをしっかり分析して、適応していこうという姿勢が見て取れた。