「単なるインサイドハーフにはなりたくない」 “ファイター”原口元気がウニオン・ベルリンで追求するやりがい

ボールを狩り、味方に預ける以上のタスクとは?

 一方で、原口自身は新たな「インサイドハーフ像」を見出したいとも思っている。ボールを狩り、味方にそれを預けるだけのタスクで満足していては、「原口元気」というプロサッカープレーヤーの本質を見失ってしまうからだ。

「(フィッシャー)監督からも、『8番(アハター)には特に攻撃に絡んでほしい』と言われている。昨季は最低ラインのスコアポイント(得点+アシストの数字)8だったから、今季はスコアポイント10は記録したい。ただ、そのためには後方でディフェンスに参加して、攻撃に移ったら長い距離をスプリントして相手ゴールへ入っていかなきゃならない。もう、そこが本当に生命線になってきて、正直しんどいけど、ウニオンでのプレー、そして今回のワールドカップのことを考えても、それが今の自分に求められるタスクだなって思う」

 今冬のカタール・ワールドカップ(W杯)で日本代表がグループリーグ初戦で対戦するドイツ代表には当然多くのブンデスリーガーがいる。

「もちろん、(自分が)ブンデスリーガで試合をしているのは1つのアドバンテージだと思う。ただね、その中で自分ももう一段階ステップアップしなきゃとも思う。自分の特性を考えても、ただ球際で勝ってボールをいっぱい集めて、前につなぎましたというのでは満足できないところに来ている。単なるインサイドハーフにはなりたくない。そういうプレッシャーを楽しみながら、今後もプレーし続けたいですね」

 マインツとウニオンのゲームは、スコアレスドローに終わった。それでもホーム、アウェー双方のチームが見せた熱い肉弾戦はスタンドの観衆へも確実に伝播し、試合が終了してしばらくしても、その“熱波”は周囲に充満し続けていた。

 2022-23シーズンはW杯シーズン。しかし、その根底には、連綿と続く国内リーグで戦う選手と、ファン・サポーターたちの情熱が横たわっている。そして原口は、その熱狂の中に身を置ける自らの境遇に希少性を感じている。

「サッカーを楽しむ」

 それが変身を果たした、ニューバージョンの“原口元気”である。

(島崎英純/Hidezumi Shimazaki)

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島崎英純

1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。

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