元Jリーガー→プロ雀士、関係者も驚愕の異色転身 “二刀流”に意欲、夢は麻雀界のエース級1000万円プレーヤー
麻雀はかつての「ギャンブル」から「頭脳スポーツ」へ進化
RMUは試験が年に2回程度(主に2月・7月)あり、合格率は約60%だという。今年7月には男女で34人が受験し、田島は見事に一発合格。RMUでは史上初、業界でも希少な“元Jリーガーのプロ雀士”が誕生した。
「牌効率(手牌の中で、どれを切れば最短で聴牌[テンパイ]にたどり着くか)を考えず、なんとなくやってきたので、テストにも出て大変でした。実技は『強さは関係なく、所作を見る』『強さはプロになってから身に付ければいい』と。リーチする時でも、『リーチ』と言って捨て牌をしてリーチ棒を出すみたいに順序があります。でも、仲間内で打っていると、所作はおろそかになる。試験官が麻雀卓を回りながらチェックするなか、『どういうふうに見られているんだろう』と、手を震わせながら実技はやっていました(苦笑)」
田島は麻雀の魅力について、「サッカーは11対11。将棋は1対1。麻雀は1対3。数的に不利な状況のなかで、麻雀卓に座ると誰も助けてくれない。自分の力で這い上がるしかない緊張感がすごく好き」と語る。近年、麻雀は「ギャンブル」という立ち位置から、互いの知性を競い合う「頭脳スポーツ」へと進化。ほんの一握りのトッププロだけが出場できるMリーグは絶大な人気を誇り、「eスポーツ」に負けない熱狂ぶりを生み出している。以前とは、世間の麻雀に対するイメージも変わってきていることを田島も実感している。
「熊本時代、ファン感謝デーで『休日にしていること』を聞かれて、『麻雀をやっています』と答えて社長にすごく怒られました。麻雀は『賭け事』とか『雀荘は危ない』みたいに、あまりいい印象はないように捉えられがちです。でも、Mリーグができてだいぶ麻雀に対する目も変わってきて、今は業界全体でスポーツ化を進めています。少しずつ新しいイメージを定着させていきたいと思っています」
もっとも、いわゆるプロ雀士となった田島だが、RMUでは「アスリート」という研修が設けられている。選手活動によるポイント、規定の成績を収めた者が審査にかけられ、それをクリアして初めて「ライセンス」が授与される。RMU所属プロは約300人。アスリート研修で辞めてしまう者も少なくなく、田島も「20歳台で雀士になっている人もいて、(39歳の)僕は20年くらい遅れを取っている。年齢面で危機感はあります」と胸中を明かす。
RMU事務局も、田島の挑戦を「正直、びっくりしました」と驚きを隠さない。
「田島さんはサッカーの世界でプロ契約まで経験しているので、例えばチームのコーチになる、サッカー教室で教える、といった道があるなかで、麻雀の世界に飛び込んできたことは驚きです。スポーツ選手が麻雀の世界に入ってくることはほとんどありませんから。セカンドキャリアで、麻雀を絡めてどう生計を立てていくのか。これは1つのパイオニアと言っていいと思います。決して楽な道のりではありませんが、麻雀の勉強を続け、サッカーで磨いた勝負感を卓上でも発揮できれば、活躍の場はそう遠くないと思います」