元Jリーガー→プロ雀士、関係者も驚愕の異色転身 “二刀流”に意欲、夢は麻雀界のエース級1000万円プレーヤー
【元プロサッカー選手の転身録】田島翔(熊本):コロナ禍によりサッカー活動に制限で麻雀のプロ試験受験を決断
近年、アスリートのセカンドキャリアは大きな注目を集めている。サッカー界であれば監督やコーチ、チームスタッフを第2の人生とする例が多い一方で、競技の枠を飛び越えて、営業マンや起業家への転身も少なくない。そのなかで、「頭脳スポーツ」として進化を遂げている麻雀の世界に飛び込んだ男がいる。田島翔、39歳――。これまで8か国18チームを渡り歩いてきたさすらいのフットボーラーは、なぜ麻雀に第2の人生を見出したのか。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小田智史)
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田島のサッカー人生は、下積み時代が長く、激動そのものだ。函館工高時代は無名で、Jリーグクラブに入団テスト受験を直訴するも断られ、シンガポールへの留学を経て、2004年に当時Jリーグ入りを目指していたFC琉球(現J2)に入団。その後、社会人リーグやクロアチア2部、スペイン5部のクラブでプレーしたのち、東日本大震災をきっかけに帰国して、12年にJ2ロアッソ熊本と待望のプロ契約を結んだ。
しかし、熊本では公式戦に1試合も出場することなく、1年で退団。フットサル転向を挟んで再びサッカー界に戻り、ニュージーランド、アメリカ、韓国、サンマリノと海外での挑戦を続けた田島は2021年に帰国し、今年3月には神奈川3部の江の島FCに加入した。もともと麻雀が好きだったというが、転身を考え始めたのは日本人初のサンマリノ1部リーグ参戦でUEFAチャンピオンズリーグ(CL)予選出場を目指していた最中、コロナ禍に見舞われたことだった。
「サンマリノでサッカー人生を終わらせようと思っていたところで、ロックダウン(都市封鎖)で家から出られず、練習もできない日々が続きました。『せっかく海外に来たのに……』と葛藤しながら、その期間はひたすらオンライン麻雀をやったり、Mリーグを視聴して、麻雀に触れることが多くなって、(転身を)意識するようになりました」
年齢的に大ベテランの域に入っている田島は、「40歳になる前にプロ試験は受けておきたい」と、39歳の誕生日を迎えた今年4月7日に麻雀プロ団体「RMU」への入会を申し込んだ。現在の麻雀界は、プロスポーツ化を目指して2018年7月に発足したプロリーグ戦「M.LEAGUE(Mリーグ)」に認定されているプロ団体が5つあり、カリスマ雀士の多井隆晴らが2007年6月に立ち上げた「RMU」はその1つ。点数計算と打牌選択の筆記、実技、面接に向けて、田島は江の島FCでサッカーに打ち込みながら、勉強に明け暮れた。
「これまでは、サッカーが目標とか充実感を与えてくれていました。ただ、自分がいつサッカーを辞めるか分からない年齢になってきて、次の人生で打ち込めるものが欲しくて、大好きな麻雀でプロになりたいと思いました。麻雀界に知り合いがいるわけではなかったので、分からないことがあっても相談できず、自分で解決するしかない。試験勉強はひたすら過去問を解いてやっていく感じ。オンライン麻雀だと勝手に点数が出ますけど、試験では自分で計算しないといけないので、苦労しました。でも、勉強していた期間はすごく充実していて楽しかったです」