「W杯を分かっていなかった」 呂比須ワグナーが夢のフランス大会で後悔した出来事は?

クロアチア戦の黒星は大きく響く結果となった【写真:Getty Images】
クロアチア戦の黒星は大きく響く結果となった【写真:Getty Images】

アルゼンチン相手に突き付けられた“世界の厳しさ”

 呂比須はグループリーグ3試合すべてで、後半途中から出場した。

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「初戦のアルゼンチン戦がすごく心に刻まれている。アルゼンチンは(ガブリエル・)バティストゥータ、(アリエル・)オルテガ、(ディエゴ・)シメオネ、クラウディオ・ロペスといった、世界でも最高の選手たちが揃う、素晴らしいチームだった。大半がイタリアでプレーしていて、バティストゥータも当時フィオレンティーナで多くのゴールを決めていた。自分と同じセンターフォワードでもあり、いつも見ていたんだ。それに、僕もブラジル出身だから、アルゼンチンにはライバル意識があったしね。

 でも、残念ながら、そのバティストゥータのゴールによって、僕らは0-1で敗れたんだ。失点したのは、ボールの出どころでの僕らのミスだった。試合が始まってすぐにボールを奪い返されて、僕らにとっては実際、冷や水を浴びせられた形だった。僕らのプレーもそんなに悪くなかったと思うんだけどね。ただ、彼らは守備の面でも、組織プレーのクオリティーが高かったから、チャンスは少ししか作れなかった」

 呂比須はそう振り返り、「余談を1つ」とアルゼンチン戦のあるエピソードを明かす。

「この試合、僕はベンチスタートだったんだけど、日本サポーターから“呂比須コール”が起こったんだ。岡田さんに、僕を投入しろと頼むためにね。ところが、クラウディオ・ロペスがそれを自分への応援だと思ったんだよね。サポーターが『呂比須! 呂比須!』と叫び、彼が手を振って応える(笑)。まぁ、当時のアルゼンチン代表選手は、日本代表に呂比須という選手がいるなんて、知らなかったんだよね」

 痛みが強く残ったのは、クロアチア戦だと呂比須は言う。

「クロアチアとはもっと対等に戦えた。ただ、僕らはもっとフィニッシュの精度を上げるべきだった。決めるべき時に決めていれば、勝ってもおかしくなかった。僕自身もそうだ。ヒデ(中田英寿)がペナルティーエリアに低い弾道のクロスを出して、僕は頭を低くして合わせたんだけど、半分頭、半分肩に当たるような形になって、ポストの脇に逸れてしまった。もし、ヘッドでしっかり合わせることができたら、たぶんゴールを決めることができた場面だ。

 ただ、僕らは守備でもミスをし、(ダボール・)シュケルにゴールを決められたんだ。そのスペースを与えてはいけなかったのにね。学ぶことが多かった。それを最悪な方法で学んだんだ。敗戦は痛みの強い、厳しい授業。本当に重要なのは、勝つことで学び、成長することだ」

藤原清美

ふじわら・きよみ/2001年にリオデジャネイロへ拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特に、サッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のテレビ・執筆などで活躍している。ワールドカップ6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTubeチャンネル『Planeta Kiyomi』も運営中。

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