鎌田大地の開幕戦出番なしは長谷部も「びっくり」 EL王者フランクフルトが三位一体で臨む“新たな冒険”

長谷部も鎌田の巻き返しに期待

 ボランチのローデに代わって途中出場したのは同じくボランチのヤキッチ。ゲッツェはフル出場したがバイエルンに一矢報いることができなかった。そして、ゲームチェンジャーとしても名高いはずの鎌田には結局、出場機会が訪れなかった。

 試合終盤に足の違和感があるトゥタに代わって出場した長谷部が、試合を振り返る。

「前半の立ち上がり、自分たちが消極的になってしまった部分があります。もちろん相手が上手かったのもありますけども。自分も失点に絡んでしまいましたし」

 スタジアムの雰囲気が凄まじかったなかで、思うような結果を得られなかった点についてはこう語った。

「昨シーズンからの流れで、ヨーロッパリーグで優勝して、多くの方が自分たちのクラブに注目してくれているなかで、こういう試合をしてしまったのはすごく残念ですね。ただ、まだシーズンは長いので、切り替えていきたいと思います」

 鎌田が不出場に終わった点については「監督の意図は僕も聞いていないんですけども」と前置きしながら、チーム内のポジション争いの厳しさを指摘している。

「実際、今、ボランチと前はいい選手が揃っているので、それでポジション争いが激しくなっている。大地はこの間、(DFBポカールのマグデブルク戦)で良かったので、今日出なかったのは僕自身もちょっとびっくりしましたけども。でも、次から、また出ると思いますよ」

 メディア対応を終えた長谷部が鎌田を呼びに行ってくれたが、すでに鎌田はロッカールームから引き上げてしまっていた。

「もう、いなくなってました、大地(笑)」

 試合終了から20分も経たずにスタジアムを離れた鎌田の所作に、憤りにも似た悔しさを感じた。それでもフランクフルトは今週水曜日にフィンランドのヘルシンキで昨季のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)とUEFAヨーロッパリーグ(EL)の覇者同士が激突するUEFAスーパーカップを戦う。栄誉あるタイトルマッチの舞台に鎌田、そして長谷部が立つ可能性は十分にある。

 すっかり日が落ちた夏のフランクフルト。スタジアムの周囲に設営された屋台を囲んでフランクフルトサポーターが酒盛りしている。彼らは試合終了直後、大敗を喫したチームに向けて熱く愛情深いアイントラハト・フランクフルトのコールを5分間以上に渡って浴びせた。

 シーズンはまだ始まったばかりだ。フランクフルトはクラブ、チーム、サポーターが三位一体になって、意義深い、2022-23シーズンの冒険に出る。

(島崎英純/Hidezumi Shimazaki)

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島崎英純

1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。

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