“寄せ集め”か連係、どちらが優位? E-1選手権で垣間見た日本が世界で戦うチーム作りの“鍵”
海外組の代表とJクラブの対戦も一興
かつて、マラドーナは優れた選手とコンビネーションを確立するために要する時間について、「10分」と答えていた。本当に優れた選手同士なら連係を作るのに時間はいらないのかもしれない。平凡な選手が数か月を一緒に過ごすより、非凡な選手同士が即興でやるほうが効果的という面は確かにあるだろう。それが代表チームの醍醐味でもあるのだが、戦術が複雑化している現在では連係の重要性は増している。
ただし、日本の場合はバルセロナやバイエルンに匹敵するクラブがない。バルサやバイエルンならワールドカップに参戦しても優勝できそうだが、Jリーグにそこまでのクラブは今のところない。しかし一方で、ヨーロッパでプレーしている選手たちを集めてもブラジル代表やアルゼンチン代表のようにはならないわけだ。
寄せ集め方式ならレアル・マドリードやバイエルンで主力を張っている選手たちを集める、あるいは世界最高クラスのJクラブが出現してそれをベースにするというのが、日本代表がワールドカップで優勝を狙える状態になるだろうか。どちらにしてもハードルは高そうだが、現状でどちらの方式が有効かを確認するのもいいかもしれない。
海外組の代表とJクラブを対戦させればいいのだ。かつて、キリンカップで日本代表と読売クラブが対戦して読売が勝ったというトラウマがあるので日本サッカー協会(JFA)はやりたくないだろうが、今の日本代表はJクラブと選手が被ることもない。カタール・ワールドカップが終わったら、やってみるのもいいかもしれない。少なくとも2軍みたいな外国の代表を呼ぶよりも、ファンの関心も高いのではないか。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。