韓国戦で負傷の宮市亮、「心の叫び」に元主審・家本氏が感銘 「胸を打った」「彼の心の痛みとシンクロ」と語る訳
【専門家の目|家本政明】宮市亮のために…「家族のような一体感や連帯感を感じた」
J1横浜F・マリノスに所属する日本代表FW宮市亮は、7月27日のE-1選手権第3戦の韓国戦(3-0)で負傷し、右膝前十字靭帯断裂と診断されて近日中の手術が決まった。2021年シーズン限りでサッカー国内トップリーグの担当審判員を勇退した元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏は自身のキャリアと重ね合わせ、「彼の心の叫びがすごく伝わってきて胸を打った」「彼の心の痛みとシンクロするものがあった」と、負傷した宮市への思いを語っている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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7月のE-1選手権では国内組で日本代表メンバーが構成され、宮市は2012年以来、約10年ぶりのA代表復帰を果たした。期待度の大きさを物語るように、第1戦の香港戦(6-0)、第2戦の中国戦(0-0)と連続起用され、27日の韓国戦でも後半14分から途中出場したなか、同31分にまさかのアクシンデントが宮市を襲う。
DF小池龍太(横浜FM)のスルーパスを追いかけ、敵陣のペナルティーエリア内まで駆け上がった宮市。ボールはガンバ大阪でプレーするDFクォン・ギョンウォンに先に触られたが、相手が蹴ったボールが宮市に渡って一転してチャンスになった。ゴールライン際で韓国キャプテンのDFキム・ジンスと競り合った際、宮市は右膝をひねる形で転倒。右膝を抱えてしばらく立ち上がれず、しばらくチームスタッフと会話したあと、同33分にMF森島司(サンフレッチェ広島)と無念の途中交代になった。
試合から3日後の7月30日、横浜FMが宮市の右膝前十字靭帯断裂と近日中の手術を合わせて発表。家本氏は「本当に不慮の事故、思いがけないアクシデント。本人はもちろん、周りも『えっ!』という驚きがあったと思う」と語る一方、元レフェリー目線で「自分がレフェリーを担当している試合で選手が大怪我をしたら、本当に心が痛む。実際、これまで担当した試合で経験したこともある。特に膝周りの接触や負傷は大怪我につながるケースが少なくないので、審判としても、ひやりとすることが多いのは確か」と経験談を明かしている。
負傷発表と同日、J1リーグ第23節・鹿島アントラーズ戦(日産スタジアム)の試合前に行われた「横浜F・マリノス30周年記念OBマッチ supported by#命つなぐアクション」でスペシャルゲストとして主審を務めた家本氏。当日の鹿島戦を現地観戦したなか、スタジアムの光景が胸に響いたという。
「『宮市亮のために』という思いがすごく伝わるプレーを選手たちがしていたし、ファン・サポーターからも熱いエールが送られていた。その日、現場に来ていた宮市選手へ、温かく、そして熱い声援が送られる様子を現場で体感し、家族のような一体感や連帯感を感じた」
家本政明
いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。