「覚悟が決まった」選手ミーティング チームを奮い立たせた反骨心 稲本潤一が回想する南アフリカW杯の舞台裏

南アフリカW杯は大会直前の選手ミーティングで一致団結【写真:Getty Images】
南アフリカW杯は大会直前の選手ミーティングで一致団結【写真:Getty Images】

【2010年南アフリカW杯戦記|稲本潤一】大会前の不振で矢面も「雰囲気は悪くなかった」

 今年11月、いよいよカタール・ワールドカップ(W杯)が開幕する。森保一監督率いる日本代表はグループリーグでスペイン、ドイツ、コスタリカと同グループとなり、“死の組”とも言われる厳しい状況のなか、史上初の大会ベスト8入りを目指す。

 7大会連続となる世界の大舞台。これまで多くの代表選手が涙を流し、苦しみから這い上がり、笑顔を掴み取って懸命に築き上げてきた日本の歴史だ。「FOOTBALL ZONE」では、カタール大会に向けて不定期企画「W杯戦記」を展開し、これまでの舞台を経験した人物たちにそれぞれの大会を振り返ってもらう。2002年、06年、10年とW杯を3回経験した稲本潤一(南葛SC)が、自身3度目の出場となった南アフリカ大会を回想する。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小田智史)

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 南アフリカW杯の岡田ジャパンを語るうえで、本大会前の“停滞”は避けて通れない。2010年2月の東アジア選手権(現・E-1選手権)では中国に0-0で引き分け、ライバルの韓国に1-3と完敗。3月のアジアカップ予選バーレーン戦(2-0)の勝利で岡田武史監督の解任論は一度は下火となったが、4月のキリンチャレンジカップ・セルビア戦(0-3)、5月のキリンチャレンジカップ・韓国戦(0-2)と連敗を喫し、周囲は再び危機感を募らせていった。それでも、チーム内にいた稲本は「そんなに雰囲気は悪くはなかった」と振り返る。

「過去2大会を経て、チームの雰囲気・一体感がすごく重要だと思いながら代表活動をしていました。僕も当時30歳。年齢的にも上のほうだったので、負けていてもしっかりと盛り上げていこうという気持ちでした。結果を受けて、チームは批判も受けていましたけど、それほど落ち込んだ雰囲気ではなかったと思います」

 浮上の1つのきっかけとなったのは、南アフリカW杯の2週間前、スイスのキャンプ地ザースフェーに入ったあとにチームキャプテンの川口能活が提案して行われた、選手だけでのミーティングだった。田中マルクス闘莉王が「俺たちはヘタクソなんだから、泥臭くやらないといけない」と口火を切ったのは有名な話だが、稲本も「覚悟が決まった」と話す。

「結果が出ていなかったなかで、一から這い上がるようなチームは失うものがない。すごく一体感が生まれやすい環境でした。闘莉王は日本人とはまた少し違う感覚を持っていたりもするので、はっきり言ってくれたのが良かった。闘莉王の言葉だけがフォーカスされがちですけど、選手全員で1時間以上も話し合いをして、覚悟が決まってみんなが1つになった。岡田監督も土壇場でやり方を変えて、選手がしっかり応えたからこそ、そのあとの結果にもつながったと思います」

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