乾貴士が清水に“ぴったり”な訳 ウィークポイント解消へ期待大、チームを変え得る“加入効果”とは?

スペイン時代のエイバルで降格も経験、プレー面以外での貢献にも期待

 清水への加入は、大熊清GMとの縁もあって「上のリーグ(J1)でやりたい」という思いが強かったことが大きい。オファーを受けた際には大熊GMからも「(プレースタイル的に清水に)合うと思うと言われました」(乾)とのことだ。実際に清水の練習に合流してからも、自分の特長を活かせそうなイメージは湧いていると、乾は自信を示す。

「うまい選手もたくさんいて、感覚の合う選手っていうのはすごく多いと思うので、ハマればいけるんじゃないかなと思っています」

 トレーニング中のミニゲームでは、ドリブルでスルスルと突破してからラストパスを通すというシーンをたびたび作り、クオリティーの高さを見せつけている。周囲との呼吸が合ってくれば、「ハマる」シーンはより増えてくるはずだ。

 乾の加入効果は、もちろんプレーの面だけではない。年齢的にはGK権田修一と同級生でチーム最年長。スペイン時代のエイバルでは降格も経験した。

「エイバルで降格した時は、監督のことを信頼しきれてなかったところがチーム内にあって、そうなってしまうと一気にガタガタといってしまうので、みんながバラバラにならずに同じ方向を向いてやっていくことが一番大事だと思います。そこをもう一度みんなで確かめ合って、合わせていきたいと思っています」

 残留争いの渦中では、試合中に選手が冷静さを失いやすくなってくる。そうなった時にボールをしっかりと落ち着かせながら、精神面でもチームに落ち着きを与えられる乾の存在は大きな価値がある。

 最年長ながら上下関係にはこだわらず、「下の子たちにも普通に接してほしいというか、全然タメ口でいいので」と乾。全体練習後に若手たちと一緒に和気あいあいと自主練に励んでいる姿も印象的だった。

「(清水には)本当に感謝しかないですし、それを早くピッチで返したいという思いが強いので、まずは降格することがないように自分の力を生かしていきたいと思っています」

 そう語る乾の表情からは、オレンジのシャツを着て戦う喜びと覚悟が存分に伝わってくる。

(前島芳雄 / Yoshio Maeshima)

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前島芳雄

まえしま・よしお/静岡県出身。スポーツ専門誌の編集者を経て、95年からフリーのスポーツライターに。現在は地元の藤枝市に拠点を置き、清水エスパルス、藤枝MYFC、ジュビロ磐田など静岡県内のサッカーチームを中心に取材。選手の特徴やチーム戦術をわかりやすく分析・解説することも得意分野のひとつ。

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