「愛するクラブを傷つけてはいけない」 罰金2000万円処分の浦和、違反行為のサポーターへ元日本代表DFが見解
【専門家の目|栗原勇蔵】浦和サポーターの「熱さ」はJリーグ随一もルール遵守は必須
Jリーグは7月26日、浦和レッズのサポーターが犯した違反行為・秩序を損なう行為に対して、けん責と罰金2000万円を科したことを発表した。浦和サポーターの行為に起因する懲罰事案は複数回に及んで看過できないとして、再び発生した場合は「無観客試合の開催又は勝点減といった懲罰を諮問する可能性があることを付言しておく」と警告。元日本代表DF栗原勇蔵氏も「愛するクラブを傷つけてはいけない」と警鐘を鳴らしている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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浦和は5月21日のJ1リーグ第14節鹿島アントラーズ戦(埼玉スタジアム/1-1)、7月2日のJ1リーグ第19節ガンバ大阪戦(パナソニックスタジアム吹田/1-1)でサポーターの違反行為が確認された。
鹿島戦は声出し応援が禁止されているにもかかわらず、「複数名(少なくとも60名)が、浦和レッズチームバスの到着の前後に、約10分間、集団で声を出して応援」を行い、マスク着用が求められているなかで、一部のサポーターがマスクを着用しなかった(マスクを顎付近にずらして着用するなど、口元をマスクで覆っていない行為を含む)。また、G大阪戦でも「複数名(少なくとも100名)が約5分間、集団で声を出して応援を行い、一部の者はマスクを着用しなかった(マスクを顎付近にずらして着用するなど、口元をマスクで覆っていない行為を含む)」ことが確認されている。
Jリーグは「浦和レッズに対するサポーターの行為に起因する懲罰事案は、複数回に及んでおり看過できないものとなっている」とし、浦和に対してけん責と過去最高額に並ぶ罰金2000万円を科したことに加え、「付言」も明記している。
「集団で声を出して応援することはサポーターによる応援の本質的事項に関わるものであり、声出し応援の禁止等のガイドライン遵守をはじめとする秩序維持にはサポーターの強い自律が必要であって、クラブには、これを促すための不断の改善努力が求められる。短期間のうちに少なくとも複数回にわたり秩序を損なう行為を阻止できなかったことは重く受け止めざるを得ない。かかる状況はJリーグ全体への社会的信用の低下につながるものであることを再認識するよう要請するとともに、今後Jリーグも浦和レッズと共に再発防止に向けて対応するものの、浦和レッズが再びサポーターの行為に起因する懲罰事案を発生させた場合、無観客試合の開催又は勝点減といった懲罰を諮問する可能性があることを付言しておく」
罰金2000万円はクラブにとって「大ダメージ」
現役時代に埼玉スタジアムで何度も浦和と対戦した経験を持つ元日本代表DF栗原氏は、「埼玉スタジアムに行った時は、熱いレッズサポーターに何度も苦しめられました。レッズは戦力的にはもちろん、あのサポーターがいるからこそ強いし、選手を後押しする力はJリーグでもトップクラスだと思います」と、浦和サポーターの持つパワーに言及。そのうえで、「熱いサポーターは個人的に好きだし、いい意味で熱さは忘れないでほしいですけど、今回の件は反省してほしい」と見解を述べる。
「サポーターの方のおかげで、Jリーグやプロクラブは成り立っています。レッズのサポーターは熱いと認知されているし、歴史があるのも分かる。でも、それはあくまでルール内での話で、ルールを破ってしまうとなんでもありになってしまいます。声を出したい気持ちも分かりますけど、罰金2000万円はクラブが支払わないといけないので大ダメージ。自分たちが愛するクラブを傷つけてはいけない。レッズのサポーターはそれがきちんとできると思うので、ルールに従ってほしいですね」
栗原氏は浦和サポーターをリスペクトしたうえで、ルール遵守の重要性を訴えていた。
(FOOTBALL ZONE編集部)
栗原勇蔵
くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。