「選手は追い込まれている」 E-1韓国戦“必勝”の崖っぷち、W杯メンバー入りテストで唯一加点したのは?

中国と引き分けた日本【写真:Getty Images】
中国と引き分けた日本【写真:Getty Images】

【識者の目】中国戦は試合中に問題を修正できなかった点は課題

 今回のE-1選手権での「ワールドカップメンバー入りテスト」はものすごくシビアだと思うんです。飛び抜けたプレーを見せないと「丸」がつかなくて、ミスは1つでも減点対象になるぐらいに。だから“第1問”の香港戦は6-0と大勝したけれど、部分点をもらえたのが相馬勇紀(名古屋グランパス)と西村拓真(横浜F・マリノス)の2人だけじゃないだろうかと推測したのでした。

 では、無得点で引き分けた“第2問”の中国戦はどうだったか。これは、ほぼ全員に加点がなかったんじゃないでしょうか。

 たしかに、中国はディフェンスラインを分厚くしてスペースを消してきました。先発した選手の平均身長は181.9センチと179.0センチだった日本を上回り、空中戦では優位に立っていました。5人交代制のメリットを生かし、少しでも疲れが見えたら先手を打つように交代させて運動量が落ちないようにしました。

 それでも、プレーの質は明らかに日本が上。さらに中国は先発平均が23.7歳、チーム全体の平均は22.6歳と、日本の先発平均26.2歳、チーム全体25.2歳よりも若く、経験値の差もありました。加えて言うと、日本は中4日、中国は中3日とコンディションでも上回っていたはずです。

 そう考えると、本来なら攻守において活躍してもすぐには「丸」が付くような試合じゃなかったはず。ところが一向に崩せないばかりか、中国のミスに助けられてピンチにならなかったり、失点をしのいだ場面もありました。

 試合開始時からパーフェクトである必要はなかったと思うんですが、試合中にピッチの中で修正できなかったのは大問題でしょう。

 森保一監督はこれまでに何度か、2018年のロシア・ワールドカップ、逆転負けした決勝トーナメント1回戦のベルギー戦で見えた課題として「ピッチの中で判断しないと、ピッチの外から指示を出していては間に合わない」と語っていました。そして、選手たちにはピッチの中で起きている問題を選手が自分で解決することを求めてます。

 今回も「コミュニケーションを取る」ということを選手に求めていて、急造チームながら自己解決できるかどうか見ているのでしょう。ところが、この試合では問題を解くことができませんでした。

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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