目を奪われた水沼宏太の「笑顔」 “遅咲き”の32歳MFがファインダー越しに輝いて映った訳
水沼は決して無理なプレーはせず冷静に状況判断
香港戦でのプレーもドリブルで攻め上がれば相手守備陣の位置を確認し、ボールをすくうようなキックでゴール前へと正確なラストパスを供給。さらにチャンスと判断すればドリブルで突破を図り、守備に回った際には果敢に相手選手へとスライディングを仕掛けた。ハードワークを厭わない、まさにいぶし銀のプレーを代表の舞台でも見せたのだった。
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水沼はクラブの同僚である宮市亮と交代する後半19分までピッチに立った。そのプレー時間内でシャッターを切った写真の中で彼の特徴が表れた1枚があった。
撮影場所はバックスタンド側のサイドラインである。後半、ファインダーに捉えた水沼はボールをキープしながら前線へと攻め上がる。そして、ルックアップしてゴール前を固める複数の香港の選手たちの動きを冷静に確認しながらパスのタイミングを伺う。この1枚は彼のプレースタイルの特徴を的確に表している。
決して無理なプレーはしない。そして、冷静に状況を判断し次のプレーを正確に行う。香港戦において右サイドを攻守にわたって支えた水沼のプレーは、十分に彼の持ち味が発揮された内容だったと言える。
32歳にして日の丸を背負う舞台に立った水沼。ファインダーの中で時に見せたその表情には厳格さが漂い、一転してチームメイトのゴールには弾ける笑顔を浮かべて祝福した。日の丸を背負う自覚を秘め、それでいて代表の舞台を存分に楽しんでいる。試合前日の練習でもランニングの場面では中央で先頭を走り、笑顔を絶やさずムードメーカーの役割りをこなしていた。
今回、E-1選手権を戦うメンバーの中で最も代表の世界を楽しんでいるのは、ほかの誰でもなく水沼なのではないだろうか。
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徳原隆元
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。