世界の頂点へ、新「ジャパンズ・ウェイ」にポジティブな変化 W杯優勝は1チームのみ…どう負けるかが問われる代表チームの宿命

日本代表でプレーする板倉滉、吉田麻也、冨安健洋【写真:高橋 学】
日本代表でプレーする板倉滉、吉田麻也、冨安健洋【写真:高橋 学】

必要なのは日本化より、むしろ脱日本化だと思っていた

 日本が世界のトップと競いたいなら、手持ちの資源や現在の尺度で考えても無駄である。例えば、少し前には体格の小さいCB(センターバック)でどうやって世界と対抗するかと考えていたが、吉田麻也、冨安健洋、板倉滉のような高身長CBが続々と現れると、そんな議論は忘れられている。GKについてももうすぐそうなる。何かが足りない、ハンデのある状態のまま差を埋めようというのはかなり虫のいい話で、「ない」を前提にするのではなく「ある」で勝負しないと世界のトップなんか目指せるわけがない。必要なのは日本化より、むしろ脱日本化だと思っていた。

 そういう点では、ジャパンズ・ウェイのニュアンスが変わってきたのはポジティブに受け止めている。ただ一方で、サッカーの代表チームは必ずといっていいほど負けて終わるという現実もある。4年に一度のワールドカップで優勝するのは1チームだけ。他の120余国の代表チームはすべて負けて終わる。つまり、どう負けるかが問われているのが代表チームの宿命といっていい。今日の敗戦を明日の勝利につなげていく作業が半永久的に続くのが代表チームであり、敗れてなお何かを残すためのチームでもあるわけだ。

 イングランド協会は数年前に「イングランドDNA」を発表しているが、勝とうとする過程でかつてあったイングランド独自のサッカーが失われた、あるいはそれが分からなくなったという背景があるように思う。勝つための合理性だけでなく、自らの存在意義を問い直す流れが各国で見られるのは、世界的に負け方が分からなくなっている時期だからなのかもしれない。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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