攻め手不足の森保ジャパン、鈴木優磨を”打開策“に推奨 E-1選手権は最適な“実験場”
【識者コラム】国内組限定で臨むE-1選手権のメンバーに注目
E-1選手権のメンバー26人が7月13日に発表される。今回はインターナショナルマッチデーではなく招集に拘束力がないため、Jリーグの選手から選抜される。
カタール・ワールドカップ(W杯)の最終メンバーに今回のE-1から入る選手はおそらく少ない。森保一監督の構想はほぼ固まっているだろうから、新たに国内組から抜擢される可能性は低そうで、もしかしたらゼロかもしれない。ただ、それだと何のための代表戦か分からなくなるので、パリ五輪を目指すU-21代表からも選抜すると言っているのは、それで将来へつなげるという名目が立つからではないかと勘繰っている。
E-1のメンバーからカタールW杯のメンバーに入る新しい選手がいるとすればGKではないかと思う。6月の強化試合で起用された権田修一、シュミット・ダニエル、川島永嗣の3人は、いずれも自陣ビルドアップにやや不安があった。
自陣からのビルドアップを諦めない方針を変えないのであれば、さらに足下が確かなGKがほしいところ。横浜F・マリノスの高丘陽平はその期待に応えられるかもしれない。守備面の安定感もあり、いきなりファーストチョイスに浮上するまではいかないにしても活躍次第ではメンバーに入れておきたい選手になるかもしれないと思うわけだ。
ほかにも良い選手はたくさんいるのだが、選んでも欧州組中心のチームに入れて試す機会は非常に限られている。ほぼぶっつけ本番だ。この段階から組み込むとしたら力量に疑いがなく、チームに新たな力を与えてくれる影響力の強い選手に限られる。
そうなると可能性があるのは鈴木優磨だろう。
2014年ブラジル大会では、それまで招集されていなかった大久保嘉人が最終メンバーに滑り込んだ。当時、アルベルト・ザッケローニ監督は前田遼一に代わるFWを探していた。攻撃の両輪である本田圭佑、香川真司を生かせる万能型の1トップだった前田に代わるFWとして大迫勇也、柿谷曜一朗を試したが確たる回答を得られず、そうこうしているうちに本田、香川が調子を落とし、大久保が切り札として招集されている。
大久保の本領は最後のコロンビア戦だった。1-4と大敗したので印象は悪いが、この試合の日本の攻撃はその前の2試合とも、それ以前のどの試合とも違っていて、まさに大久保のチームになっていた。過去のW杯のすべての試合と比較しても、日本の攻撃出力は最大だったと思う。
大久保が勝手に暴れ回った結果、本田、香川、岡崎慎司との連係で無秩序ながら妙に迫力ある攻撃が実現していたのだ。守備が手薄になって大量失点しているが、日本の攻撃は魅力的で多くのチャンスを作っていた。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。