Jクラブ→プレミアクラブ行き…「まさか半年で」こじ開けた“狭き門”の舞台裏 MF川辺駿が衝撃「でかくて、速くて、強いやつが上手い」

プレミアクラブの練習参加は驚きの連続「凄い所に来たなと感じました」

 プレミアクラブでのトレーニングは、さまざまな気付きと驚きがあった。インテンシティー(プレー強度)はさらに上がり、そこでプレーする選手のクオリティーは高水準だった。

「練習をやってみて、やっぱりクオリティーというのがはるかに高いなと感じました。でかくて、速くて、強いやつが上手い。プレミアリーグというのはそういうところなんだなと。インテンシティーも凄いんですけど、そのなかでも1つ1つのパスが的確だと感じました。あとはメンタリティーの部分というか、自分の武器がはっきりしているところも印象的でしたね。ウルブスって全選手の名前が分かるほど日本で人気があるチームではないかもしれないですけど、それでもいい選手ばっかり。正直自分もまだ名前を知らないような選手もいたんですけど、名前を覚えたくなる選手ばっかりでしたね。凄い所に来たなと感じました。

 あと練習場も凄い広い敷地の中にグラウンドが何面もあって、大きいクラブハウスがあって、中もすごい設備が整っている。ウルブスってプレミアリーグの中だったらビッグクラブではないかもしれないですけど、他リーグから見たら普通にビッグクラブだと思います。凄かったですね」

 今年1月の渡英時に、川辺はプレミアリーグの試合を観戦し、その雰囲気に一気に魅了されている。ピッチで戦う選手の息吹が感じられるスタジアム。ファンの声が重なり合い、生き生きし出す関係性。最高峰の選手たちがバチバチに戦い合うフィールド。そこでプレーする自分を思い描きながら、川辺は試合の行方を追っていたことだろう。

 契約上、昨季いっぱいはグラスホッパー所属で、今夏からはウォルバーハンプトンでのチャレンジになる。その後の動向は現時点で不透明だ。スイスリーグ挑戦の初年度でボランチながら自己キャリアハイの7得点をマーク。欧州サッカーで求められるインテンシティーと向き合いながら、自身の特徴をさらに伸ばすことにチャレンジし、成長を遂げている。次章ではどんな物語が始まるのだろうか。現日本代表には少ない「ボックス・トゥ・ボックス」タイプの選手で、11月のカタール・ワールドカップに向けて面白い存在になるのではないだろうか。

「ウルブスに必要とされないといけないので、今いるところでどれだけ活躍できるかだと思います。契約することはすごく難しいと思っていますけど、今は『あそこで活躍したい』とか『活躍するぞ!』というモチベーションがすごく高いです」

[プロフィール]
川辺駿(かわべ・はやお)/1995年9月8日生まれ、広島県出身。広島高陽FC―サンフレッチェ広島Jrユース―サンフレッチェ広島ユース―サンフレッチェ広島―ジュビロ磐田―サンフレッチェ広島―グラスホッパー(スイス)。2014年に広島のトップチームに昇格。15年に磐田へ期限付き移籍して頭角を現すと、18年から広島へ復帰して主力としてフル稼働し、21年7月からグラスホッパーへ移籍。22年1月、ウォルバーハンプトンへ3年半契約で加入が決まり、同シーズンは期限付き移籍の形でグラスホッパーで引き続きプレーした。21年3月25日の韓国戦でA代表デビューを飾り、同年6月7日のタジキスタン戦で代表初ゴールをマークしている。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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