MF川辺駿、海外移籍で感じた「インテンシティー」の違いと処世術とは? 「球際って言葉はあまり好きじゃない」と語る理由
「無理やりガンガン行っても、相手の方が有利」の状況でいかにデュエルと向き合うか
デュエルだけではなく、どこが重要になってくるのか。デュエルを避けるということではなく、デュエルとの関わり方が重要ではないかと川辺は言う。
「無理やりガンガン行っても、相手の方が有利。それだったら、例えば周りが競ったのを自分が拾うというのも重要かなと思います。当たりに強い選手は、相手にも、味方にもいる。そういう選手が競った後に反応するようにしてます。監督からも、口ずっぱくセカンドボールって言われますし(笑)。いつも自分のところにこぼれてくるわけではないですけど、意識してます。準備すればするほど、自分のところにこぼれてくることがあれば、違うところにこぼれた時の反応もストレスなくスムーズに反応できる。だから常に足を止めず、というのは意識していますね」
1対1の局面が多く、そういう場面で簡単に負けるわけにはいかない。目の前で対峙している選手に勝ってみせると戦いを受け入れる心構えは必須だ。でもそれが無謀になってしまったら結局、困るのチームだ。ならばボールを奪い切れないまでも、相手に有利な状況を作らせないようにはできなければならないし、自分の特徴を発揮して攻守に良さを出せるアプローチを見つけることが、厳しい欧州を戦い抜いていくためには欠かせない。
身体のぶつかり合いが当たり前にあるプレッシャーのなか、少しの油断が失点につながるようなヒリヒリした雰囲気や、勇敢にゴールを目指し合う試合を経験できる環境が、日本でももっと当たり前になること。それが選手のさらなる成長につながる大事な要素ではないだろうか。
※第4回へ続く
[プロフィール]
川辺駿(かわべ・はやお)/1995年9月8日生まれ、広島県出身。広島高陽FC―サンフレッチェ広島Jrユース―サンフレッチェ広島ユース―サンフレッチェ広島―ジュビロ磐田―サンフレッチェ広島―グラスホッパー(スイス)。2014年に広島のトップチームに昇格。15年に磐田へ期限付き移籍して頭角を現すと、18年から広島へ復帰して主力としてフル稼働し、21年7月からグラスホッパーへ移籍。22年1月、ウォルバーハンプトンへ3年半契約で加入が決まり、同シーズンは期限付き移籍の形でグラスホッパーで引き続きプレーした。21年3月25日の韓国戦でA代表デビューを飾り、同年6月7日のタジキスタン戦で代表初ゴールをマークしている。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。