MF川辺駿、海外移籍で感じた「インテンシティー」の違いと処世術とは? 「球際って言葉はあまり好きじゃない」と語る理由
ふとこぼした“球際論”「そればっかりがすごくフォーカスされている」
みんなが喜びの瞬間を共有しているシーンを思い浮かべながら話を聞いていると、「あ、あと」といって川辺が笑った。
「キッズキャンプとかグラスホッパーが主催して子供のイベントに行っても、小さな子供から『あれ、ナイスプレーだったよー!』とか言ってもらえたり(笑)。『お、おう、ありがとう』みたいな(笑)。いやぁ、嬉しいですね、そういうの。純粋に思ったままを言ってくれるので。ありがたいですね」
シンプルといえばシンプル。ゴールへの道や関われるタイミングを求めながらプレーをする。待っているだけではチャンスは転がってこない。だから走る。だから探る。グラスホッパーで、2021-22シーズンに34試合に出場し、過去キャリアハイとなる7ゴール(3アシスト)を挙げた裏には、そうした取り組みがある。
「よりゴールに向かうようになってますし、何が重要かをすごく感じるようになっているかなと。もちろんミスをしないというのも重要な部分だと思うんですけど、ミスをしていい場面というか、勝負する場面では躊躇しない。それでミスになったとしても、そんな気にしないというか、次を狙えばいいという思いになります。もちろん、そればかり繰り返していると難しいので、いかにチームの一員として戦えるかが前提として重要だと思います」
そんなインテンシティーの話をしているなかで、ふと川辺が「球際って言葉はあんまり好きじゃないんですが」とこぼしていた。興味を持ったので、「それはなぜでしょうか?」と重ねて質問をさせてもらった。ちょっと考えた後に川辺は言葉を口にする。
「もちろん重要な部分だと思うんですけど、そればっかりがすごくフォーカスされているというか。自分がもっとやらなきゃいけない部分だからというのもあるんですけど、それだけで勝とうとしているというか、結局それだけじゃないというのは感じているんです。こっちにはすごいでかい選手が多くて。さすがに2メートルの長身DF相手に普通に競って勝てるわけがない(苦笑)。監督からもそいつに勝てとは言われない。頑張って競ったりはしますけど、そこじゃない違う部分がすごく重要だと思う」
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。