W杯強豪国のスタイルは「伝統的ではない」 ドイツは“スペイン化”からの揺り戻し…一定も、一貫もしていない代表チーム“らしさ”

ドイツが後追いしたスペインにしても、元をたどれば輸入品

 ドイツはボール保持によるゲーム支配のスタイルが10年ほど続いてきたが、ハンジ・フリック監督に代わってから強度に重きを置いたプレーに変化しつつある。いわば「スペイン化」からの揺り戻しなのだが、それ以前はマンツーマンの守備の強さをベースにした武骨なスタイルだった。しかし、その前の70年代はトータルフットボールの代表的なチームの1つと呼ばれたぐらいモダンなチームだった。アルゼンチンほど極端なスタイルが2つあったわけではないが、時代によって変化してきた。

 ドイツが後追いしたスペインにしても、現在のスペインらしさはおよそ15年前からであって、実はそんなに伝統的なものではない。ヨハン・クライフ監督がバルセロナにオランダ方式を持ち込み、それが代表チームに波及するまでに15年ほどかかり、そこから現在のスペインになっているので元をたどれば輸入品でもある。

 強豪国でも時代によってスタイルは変化していて、意外と絶対的なものではないのだ。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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